ウェストモーランド伯爵

ウェストモーランド伯爵

ウェストモーランド伯爵（英語: Earl of Westmorland）は、イングランド貴族における由緒ある爵位です。この爵位は、過去に2度創設されており、それぞれ異なる家系によって継承されてきました。

ネヴィル家による第1期

第1期のウェストモーランド伯爵は、中世イングランド北部で強大な勢力を誇ったネヴィル家によって保有されました。ネヴィル家は13世紀初頭から台頭し、パーシー家と並び称されるほどの有力貴族でした。1295年には、ラナルフ・ネヴィルがレイビーのネヴィル男爵として議会に召集されています。

1397年、第6代ネヴィル男爵ラルフ・ネヴィルは、リチャード2世への貢献が認められ、ウェストモーランド伯爵に叙されました。彼は、リチャード2世がヘンリー4世に王位を奪われるという政変を巧みに乗り切り、ヘンリー4世からも信任を得て、1405年にはノーサンバランド伯ヘンリー・パーシーの反乱鎮圧に貢献しました。

初代伯は多くの子に恵まれ、その子孫たちが爵位を継承していきました。特に、リチャード・ネヴィルはソールズベリー伯爵位、ウィリアム・ネヴィルはフォーコンバーグ男爵位（後にケント伯爵に叙される）、エドワード・ネヴィルはバーガベニー男爵位をそれぞれ継承し、ネヴィル家の勢力拡大に貢献しました。

しかし、5代ウェストモーランド伯ヘンリー・ネヴィルはカトリックとしてメアリー1世を支持し、その息子の6代ウェストモーランド伯チャールズ・ネヴィルもまたカトリックでありました。1569年、チャールズは北部諸侯の乱を起こしたため、国外追放となり、爵位も剥奪されることとなりました。

フェイン家による第2期

ネヴィル家の女系子孫であるフランシス・フェイン(1580–1629)は、庶民院議員を務めた人物です。彼は1624年12月29日に、イングランド貴族爵位であるウェストモーランド伯爵とサセックス州におけるバーガーシュのバーガーシュ男爵に叙されました。これが2期目のウェストモーランド伯爵位の創設であり、以降、彼の男系男子によって爵位は継承されています。

7代ウェストモーランド伯ジョン・フェイン(1685–1762)は、陸軍軍人として大将まで昇進した人物です。彼は襲爵前の1733年10月4日にアイルランド貴族爵位であるキャザーロー州におけるキャザーロー男爵に叙されましたが、子がいなかったため、この爵位は一代で絶えました。

10代ウェストモーランド伯ジョン・フェイン(1759–1841)は、18世紀後期から19世紀前期にかけて、トーリー党政権で王璽尚書などの閣僚職を歴任しました。

2020年現在、16代ウェストモーランド伯アンソニー・フェインが当主を務めています。

伯爵家の紋章に刻まれるモットーは、「祭壇を汚すなかれ（Ne Vile Fano）」です。この家訓は、「ネヴィル」や「フェイン」の姓を含んだカンティング・モットーとなっています。

現当主の保有爵位

現当主アンソニー・フェインは、以下の爵位を保有しています。

第16代ウェストモーランド伯爵 (16th Earl of Westmorland)
(1624年12月29日の勅許状によるイングランド貴族爵位)
第16代サセックス州におけるバーガーシュのバーガーシュ男爵 (16th Baron Burghersh, of Burghersh in the County of Sussex)
(1624年12月29日の勅許状によるイングランド貴族爵位)

※バーガーシュ男爵位は、法定推定相続人の儀礼称号となっています。

歴代ウェストモーランド伯爵

ウェストモーランド伯爵 第1期 (1397年)

初代ウェストモーランド伯ラルフ・ネヴィル (1364–1425)
2代ウェストモーランド伯ラルフ・ネヴィル (1408–1484) - 初代の孫
3代ウェストモーランド伯ラルフ・ネヴィル (1456–1499) - 2代の甥
4代ウェストモーランド伯ラルフ・ネヴィル (1497–1549) - 3代の孫
5代ウェストモーランド伯ヘンリー・ネヴィル (1525–1564) - 4代の子
6代ウェストモーランド伯チャールズ・ネヴィル (1542–1601) - 5代の子、1571年剥奪

ウェストモーランド伯爵 第2期 (1624年)

初代ウェストモーランド伯フランシス・フェイン (1580–1629)
2代ウェストモーランド伯マイルドメイ・フェイン (1602–1666) - 初代の子
3代ウェストモーランド伯チャールズ・フェイン (1635–1691) - 2代の子
4代ウェストモーランド伯ヴィアー・フェイン (1645–1693) - 2代の弟
5代ウェストモーランド伯ヴィアー・フェイン (1678–1699) - 4代の子
6代ウェストモーランド伯トマス・フェイン (1683–1736) - 4代の弟
7代ウェストモーランド伯ジョン・フェイン (1685–1762) - 4代の弟
8代ウェストモーランド伯トマス・フェイン (1701–1771) - 6代の二従兄弟の子。息子の一人ヘンリー・フェインの子孫にバジル・ホール・チェンバレン、ヒューストン・チェンバレン兄弟がいる。
9代ウェストモーランド伯ジョン・フェイン (1728–1774) - 8代の子
10代ウェストモーランド伯ジョン・フェイン (1759–1841) - 9代の子
11代ウェストモーランド伯ジョン・フェイン (1784–1859) - 10代の子
12代ウェストモーランド伯フランシス・ウィリアム・ヘンリー・フェイン (1825–1891) - 11代の子
13代ウェストモーランド伯アンソニー・マイルドメイ・ジュリアン・フェイン (1859–1922) - 12代の子
14代ウェストモーランド伯ヴィアー・アンソニー・フランシス・フェイン (1893–1948) - 13代の子
15代ウェストモーランド伯デイヴィッド・アンソニー・トマス・フェイン (1924–1993) - 14代の子
16代ウェストモーランド伯アンソニー・デイヴィッド・フランシス・ヘンリー・フェイン (1951-) - 15代の子

推定相続人は、現当主の弟ヘンリー・セント・クレア・フェイン (1953-)

参考文献

松村赳、富田虎男『英米史辞典』研究社、2000年。ISBN 978-4767430478。

関連項目

アバーガヴェニー侯爵
バーガヴェニー男爵
ラティマー男爵
* フェイン子爵

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