ウェルウィッチア

ウェルウィッチア：砂漠に生きる驚異の植物

ウェルウィッチア（学名：Welwitschia mirabilis）は、グネツム綱に属する裸子植物で、ウェルウィッチア科に分類されます。この科には現生種が本種のみという特異な存在です。アフリカのナミブ[[砂漠]]、特にアンゴラとナミビアに分布し、1対の葉を生涯伸ばし続けるという他に類を見ない特徴を持ち、非常に長い寿命を持つことでも知られています。

和名ではサバクオモト（砂漠万年青）やキソウテンガイ（奇想天外）と呼ばれ、現地の言葉でも様々な名で呼ばれています。その特異な姿から「生きている化石」と呼ばれることもあります。

発見と分類

1859年にオーストリアの探検家フリードリヒ・ヴェルヴィッチュによってアンゴラの砂漠で発見されました。ヴェルヴィッチュが持ち帰った標本を元に、ロンドン・リンネ学会のジョセフ・ダルトン・フッカーが詳細な研究を行い、ヴェルヴィッチュの名にちなんで Welwitschia という属名が与えられました。種小名の mirabilis は、ラテン語で「驚異の」を意味します。

本種には2つの亜種が認められており、アンゴラ産の基亜種とナミビア産の亜種では雄花の色が異なります。また、ウェルウィッチアの分類上の位置づけは、分類体系の更新によって変化してきましたが、現在はグネツム目に属し、マツ目と近縁であることがわかっています。グネツム目を含む裸子植物の祖先は古生代の終わりに現れ、中生代には植物相の主要な要素となりました。ウェルウィッチア科の化石は、白亜紀前期の地層から発見されています。

分布と生育環境

ウェルウィッチアは、ナミブ[[砂漠]]の北部に広がるカオコランドと呼ばれる地域に固有です。乾燥した地域で、海岸から内陸100km程度の場所に自生しています。年間降水量は少ないですが、雨季にはわずかな雨が降り、霧からの水分や地下水を利用して生育しています。特に、季節的な川沿いに多く見られ、霧の多い海岸地域では群生していることもあります。

形態

茎は木質で、高さは最大でも1.5m程度ですが、植物体全体の直径は8mに達することもあります。茎の先端からは2枚の帯状の葉が伸びており、これらの葉は根元の分裂組織から絶え間なく成長します。成長した葉は、風や外的要因によって裂け、複数枚あるように見えます。茎の中央部からは花序が出て、雌雄異株です。雌花は球果状で、雄花は退化した胚珠を持ちます。種子は翼を持っており、風によって散布されます。

生態

種子が発芽すると、まず子葉が伸び、その後2枚の本葉が形成されます。本葉は生涯にわたって成長し続け、茎の分裂組織は本葉形成後に枯死します。ウェルウィッチアは、乾燥に適応するために葉の気孔から大気中の湿気を吸収し、地下深く伸びた根によって地下水を吸い上げます。また、葉の表面にあるクチクラ層が厚く、蒸散を防いでいます。

ウェルウィッチアは、CAM型光合成を行うと考えられていますが、その炭素固定量は非常に少ないです。また、雄株は花蜜を分泌し、昆虫によって受粉が行われます。主な送粉者としては、ホシカメムシ科の昆虫が知られています。

個体の寿命は正確にはわかっていませんが、1000年以上生きる個体も確認されており、2000年を超える可能性も指摘されています。種子から発芽した個体が、再び種子をつけるまでには、25年ほどかかると考えられています。

人との関わりと保護

ウェルウィッチアは、世界中の植物園で栽培されており、その特異な姿を見ることができます。また、ナミビアの国章にも用いられています。

ワシントン条約の附属書IIに掲載されており、希少植物として保護されています。生息地であるナミビアでは厳重に管理されており、アンゴラでは内戦の影響で人間の活動が制限されたため、結果的に保護されている面もあります。しかし、菌類感染や車両による損傷、収集家による採集、動物による食害など、多くの脅威にさらされています。

栽培

ウェルウィッチアの種子は専門業者から入手でき、低温・低湿度下で長期間保存できます。発芽には、外種皮を除去することが有効ですが、水に浸すと発芽が阻害される可能性があります。また、野生の種子は菌類に汚染されていることが多く、発芽後に根腐れを起こしやすいです。栽培下の種子は汚染が少なく、比較的容易に栽培できます。

まとめ

ウェルウィッチアは、砂漠という過酷な環境に適応した、驚くべき植物です。その特異な姿や生態、長い寿命は多くの人々を魅了し、植物学上も重要な研究対象となっています。しかし、生育環境の変化や様々な脅威にさらされており、将来的な保護が課題となっています。

参考文献

『園芸植物大事典 1』、(1994)、小学館

外部リンク

Gymnosperm database: Welwitschia
Ecology & Evolutionary Biology Conservatory
The Welwitschia Page: photos of Welwitschia in the wild
Bihrmann's Welwitschia growing project
Robert Krulwich So What If It's Ugly? It Just Keeps On Going ...
サボテン今昔 No.2-1 「奇想天外」
ナミブ[[砂漠]]のウェルウィッチア （在アンゴラ日本国大使館）
* ウェルウィッチア（奇想天外）の花粉 （国立論文学研究所 論文情報ナビゲータ）

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