フリードリヒ・ヴェルヴィッチュ

フリードリヒ・ヴェルヴィッチュ：未知の植物を求めた探検家

フリードリヒ・ヴェルヴィッチュ（Friedrich Martin Josef Welwitsch、1806年2月25日 - 1872年10月20日）は、オーストリア出身の植物学者であり、探検家として知られています。彼は特に、アンゴラの砂漠で発見した珍しい植物ウェルウィッチアによって、その名を植物学史に刻みました。

生い立ちと初期のキャリア

ヴェルヴィッチュは、ケルンテン公国の豊かな家庭に生まれました。父親は法律家であり、息子にも法律の道を望んでいましたが、ヴェルヴィッチュはウィーンで医学と植物学を学びました。その後、彼は医師として働きましたが、植物学への情熱を捨てきれず、1839年に医師の職を辞し、植物学研究に専念することを決意します。

ポルトガルへの渡航とアンゴラ探検

植物学の研究に専念するため、ヴェルヴィッチュは当時珍しい植物を取引していたヴュルテンベルク植物協会の植物標本交換会に参加し、ポルトガルへと渡りました。彼はカナリア諸島やマデイラ諸島で採集した植物を交換会に送り、収入を得ていました。その活動がポルトガル政府の目に留まり、1853年にヴェルヴィッチュはポルトガル領であったアンゴラへの派遣を命じられました。

アンゴラでの6年間、ヴェルヴィッチュは8000組にも及ぶ植物標本を収集しました。その中には約5000種もの植物が含まれており、そのうち約1000種が新種であったとされています。彼はアンゴラ各地を探検し、その足跡はルアンダからクアンザ川、さらにマランジェ州のプンゴ・アンドンゴにまで及びました。特に、ナミブ砂漠での探検は、ウェルウィッチアという特異な植物の発見につながりました。また、アメリカ大陸以外で初めて発見されたサボテンであるリプサリス（Rhipsalis baccifera）も、彼の功績の一つです。

ウェルウィッチアの発見

ヴェルヴィッチアは、砂漠という過酷な環境に適応した、非常にユニークな植物です。2枚の葉を持ち、その葉の気孔から大気中の湿気を吸収し、長い根で地下水を吸い上げるという特徴を持っています。この植物の発見は、当時の植物学界に大きな衝撃を与えました。

イギリスでの研究と晩年

1861年に8年間のアンゴラ探検を終え、ポルトガルに戻ったヴェルヴィッチュは、より良い研究環境を求めて1863年にイギリスへと渡りました。彼は自然史博物館や王立植物園（キューガーデン）の支援を受け、アンゴラで収集した膨大な標本の分類作業を行いました。その成果として、『アンゴラの菌類』や『アンゴラの花環』といった著作を出版しました。

しかし、彼の集めた標本の大部分は火災によって失われてしまいます。標本をめぐっては、ポルトガル政府とイギリス自然史博物館との間で所有権を争うことになり、最終的には分け合う形で決着しました。ヴェルヴィッチュはロンドンで亡くなりましたが、彼の残した功績は、今日の植物学研究においても非常に重要なものとなっています。

ヴェルヴィッチュの業績

ヴェルヴィッチュは、その生涯を通じて、多くの植物を採集し、分類しました。彼の業績は、植物学の発展に大きく貢献したと言えるでしょう。彼の情熱と探求心は、後世の植物学者たちに大きな影響を与えました。また、彼の収集した植物標本は、現在も貴重な研究資料として活用されています。

主な著作

Beiträge zur kryptogamischen Flora Unterösterreichs. (1834)
Synopsis Nostochinearum Austriae inferioris. (1836)
Genera Phycearum Lusitanae. (1850)
Apontamentos Fito-geograficos sobre a Flora da Província de Angola na Africa Equinocial. (1858)
Sinopse explicativa das amostras de Madeiras e drogas medicinais (...) coligidos na provincia de Angola, e enviados a Exposição Internacional de Londres 1862. (1862)
Sertum Angolense. (1869)
Notizen über die Bryologie von Portugal. (1872)

参考文献

JSTORの記述
Strlič, Matija. "Dr. Friderik Velbič, 1806–1872". Proteus, the journal of the Natural Sciences Society of Slovenia. Year 61, No. 9/10 (pp. 396-404).
Lloyd CG. (1907). "New notes on the Geasters". Mycological Notes 25: 315.
Wraber, Tone. "Prvi odkritelj Blagayevega volčina je bil (slovenski?) Korošec" [The first discoverer of Daphne blagayana was a (Slovene?) Carinthian]. Proteus, the journal of the Natural Sciences Society of Slovenia. Year 61, No. 9/10 (pp. 391).
Hermann Th. Schneider, Streets and Squares in Klagenfurt, Klagenfurt, no year, p.253
Albuquerque, S. (2008). “Friedrich Welwitsch”. Strelitzia 22: 2–3.
Albuquerque, Sara; Brummitt, R.K.; Figueiredo, Estrela (2009). “Typification of names based on the Angolan collections of Friedrich Welwitsch”. Taxon 58 (2): 641–646.
Goyder, David J.; Gonçalves, Francisco Maiato P. (2019). “The Flora of Angola: Collectors, Richness and Endemism”. In Huntley, Brian J.; Russo, Vladimir; Lages, Fernanda et al.. Biodiversity of Angola: Science & Conservation: A Modern Synthesis. Springer. pp. 79–96.

関連文献

Albuquerque, S.; Figueirôa, S. (2018). “Depicting the invisible: Welwitsch’s map of travellers in Africa”. Earth Sciences History 37 (1): 109–129.

外部リンク

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