ウェンディ・カルロス

ウェンディ・カルロス

ウェンディ・カルロス（Wendy Carlos）は、1939年11月14日にアメリカのロードアイランド州ポータケットで生まれたシンセサイザー奏者および作曲家です。彼女は元の名前をウォルター（Walter）とし、1972年に性別適合手術を受け、男性から女性へと移行しました。カルロスの姓は時折「カーロス」と表記されることがあります。

経歴

カルロスは1953年にセント・ラファエル・アカデミーに入学し、1958年から1962年にかけてブラウン大学で音楽および物理学を学びました。その後、コロンビア大学で作曲に関する修士号を取得しました。彼女のキャリアのスタートは1968年10月に発表されたアルバム『スウィッチト・オン・バッハ（Switched-On Bach）』にあります。このアルバムではモーグ・シンセサイザーを使用してバッハの作品を演奏しており、プロデューサーのレイチェル・エルカインドと共に製作を行いました。グレン・グールドからの称賛を受け、新たなバッハ演奏のスタンダードを打ち立てたこの作品は、Billboard 200で10位、ビルボード・クラシカルアルバムチャートで1位を獲得し、グラミー賞の3部門を受賞しました。

カルロスは自身の性同一性障害を5歳または6歳の時に認識し、1968年からホルモン療法を始めました。これによって彼女の外見は次第に変わり、『スウィッチト・オン・バッハ』の商業的成功を背景に、1972年には性別適合手術を受けました。同年、3作目のアルバム『Sonic Seasonings』を発表しました。

さらにカルロスは、1973年にジョアン・ジルベルトのアルバム『三月の水』のレコーディング・エンジニアを務め、1979年に『PLAYBOY』誌にて性別適合手術を行ったことを公にしました。彼女は「私自身を解放することを望んでいた」と語り、公開の場としてこの雑誌を選んだ理由を述べています。

カルロスは、商業的な成功とは別に音律や微分音への関心も持っており、「α・スケール」「β・スケール」「γ・スケール」という3つの特殊な音階を創り出しました。また、映画音楽としてスタンリー・キューブリック監督の『時計じかけのオレンジ』や『シャイニング』、さらには『トロン』で音楽を担当しました。

日本への影響

ウェンディ・カルロスの初期のシンセサイザー作品は、日本でも大きな影響を与えました。特に冨田勲は1969年に大阪市のレコード店で『スウィッチト・オン・バッハ』と出会い、2年後にモーグ・シンセサイザーを日本に初めて個人輸入しました。彼の1974年のアルバム『月の光』はグラミー賞に3部門ノミネートされています。

また、高橋悠治が制作したシンセサイザー版のバッハの『フーガの技法』や、アニメ『スペースコブラ』のBGMにおけるオルガン演奏にも、カルロスの作品が影響を与えたと言われています。

参考

ウェンディ・カルロスは、アメリカの音楽史において非常に重要な存在であり、彼女の音楽や生き方は多くの人々にインスピレーションを与え続けています。彼女の公式サイトでは、さらなる情報を得ることができます。

もう一度検索