ジョアン・ジルベルト

ジョアン・ジルベルト：ボサノヴァの伝説

ジョアン・ジルベルト（João Gilberto, 1931年6月10日 - 2019年7月6日）は、ブラジルが生んだ不世出の音楽家であり、作曲家のアントニオ・カルロス・ジョビン、作詞家のヴィニシウス・ヂ・モライスらと共にボサノヴァを創成した人物として知られています。彼の独特なギター奏法と囁くような歌声は、世界中の音楽ファンを魅了し、ボサノヴァを世界的な音楽ジャンルへと押し上げました。

生涯

ジョアン・ジルベルトは、ブラジル北東部のバイーア州ジュアゼイロで生まれました。幼少期から音楽に親しみ、10歳の時にギターを手にして以来、音楽の道を志すようになります。19歳でリオ・デ・ジャネイロに移り、ボーカル・グループに参加しますが、すぐに脱退。その後は、音楽活動が思うようにいかず、苦しい生活を送ります。マリファナ中毒にも苦しみますが、姉の家に身を寄せ、音楽に没頭する中で、独自のギター奏法「バチーダ」を発明します。

1957年、アントニオ・カルロス・ジョビンとの出会いが、彼の運命を大きく変えます。ジョビンの才能に惚れ込んだジョアンは、ジョビンとヴィニシウス・ヂ・モライスと共に、ボサノヴァの基礎を築き上げていきます。1958年には、エリゼッチ・カルドーゾのアルバムにギタリストとして参加し、同年、ジョビンとモライスによるシングル「想いあふれて」を録音。この曲は、ボサノヴァ初の楽曲として知られ、若者たちの間で爆発的な人気を博し、ボサノヴァ・ムーブメントの火付け役となりました。

1963年には、ジャズ・サックス奏者スタン・ゲッツとの共演作『ゲッツ/ジルベルト|ゲッツ_ジルベルト』を発表。「イパネマの娘」は世界的な大ヒットとなり、ボサノヴァは一躍世界的な音楽ジャンルとして認知されるようになりました。1965年には、『ゲッツ/ジルベルト|ゲッツ_ジルベルト』でグラミー賞最優秀アルバム賞を受賞。その後も、精力的に音楽活動を続けましたが、1960年代後半には、ボサノヴァ・ブームの退潮や軍事政権の台頭などの影響から、メキシコシティへ移住します。

1973年にブラジルへ帰国してからも、独自の音楽性を追求し続け、数々の名作を発表しました。2000年には、カエターノ・ヴェローゾのプロデュースによるアルバム『ジョアン 声とギター』を発表し、グラミー賞最優秀ワールドミュージック・アルバム賞を受賞。2003年には、初の日本公演を行い、大きな話題となりました。

2019年7月6日、ジョアン・ジルベルトは、リオ・デ・ジャネイロの自宅で88年の生涯を閉じました。彼の音楽は、今もなお世界中の音楽ファンに愛され続けています。

代表曲

「想いあふれて」 - "Chega De Saudade"
「フェリシダーヂ」 - "A Felicidade"
「イパネマの娘」 - "The Girl From Ipanema"
「デサフィナード」 - "Desafinado"
「静かな夜」 - "Corcovado"

ディスコグラフィー

『想いあふれて』 - Chega de Saudade (1959年)
『愛と微笑みと花』 - O Amor, o Sorriso e a Flor (1960年)
『ジョアン・ジルベルト (ボサ・ノヴァ!)』 - João Gilberto (1961年)
『ゲッツ/ジルベルト|ゲッツ_ジルベルト』 - Getz/Gilberto (1964年) ※with スタン・ゲッツ
『AMOROSO (イマージュの部屋)』 - Amoroso (1976年)
* 『ジョアン 声とギター』 - João Voz e Violão (2000年)


ジョアン・ジルベルトは、ボサノヴァの歴史そのものであり、彼の音楽は、時代を超えて人々の心を魅了し続けるでしょう。

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