ウエストコースト航空956便墜落事故

ウエストコースト航空956便墜落事故の概要

1966年10月1日、ウエストコースト航空956便は、ユージーン空港からポートランド国際空港へ向かう途中で、オレゴン州クラカマス郡に墜落しました。この事故により、乗員乗客18名全員が犠牲となりました。使用されていた機体はマクドネル・ダグラス DC-9-14型機で、この事故はDC-9にとって初の機体損失事故であり、ウエストコースト航空にとっても初の死亡事故となりました。

事故機の詳細

事故を起こしたDC-9-14型機（N9101）は、製造番号45794として製造され、1966年に初飛行を行いました。事故のわずか15日前、ウエストコースト航空に納入されたばかりの新機でした。運航開始から総飛行時間は164時間で、連邦航空局の要求に従い整備されていました。この75人乗りの機体の価格は、当時300万ドル（約3億円）でした。

乗員の状況

956便の乗員は、機長、監査役の機長、副操縦士、そして2名の客室乗務員の計5名でした。

機長: 総飛行時間は18,900時間以上と豊富でしたが、DC-9での飛行時間はわずか17時間でした。
監査役の機長: 総飛行時間は21,800時間以上でしたが、DC-9での飛行時間は50時間でした。
副操縦士: 総飛行時間は9,500時間以上でしたが、DC-9での飛行時間はわずか9時間でした。

機長と副操縦士は事故の2日前に、監査役の機長は9月20日に技能試験を終えていました。乗員5名は全員シアトル近郊に在住でした。また、乗客の中にはウエストコースト航空の従業員が3名含まれていました。

事故の経緯

事故当日、956便は、まずシアトルからポートランド、ユージーンを経由してサンフランシスコへ向かう941便として運航されました。約1時間後、乗員を変えずに、ユージーンからポートランドへ向かう956便として運航されました。956便は19時52分にユージーンを出発し、高度12,000フィート（3,660m）で計器飛行方式（IFR）による飛行許可を得ていました。

20時04分（PDT）、956便は航空交通管制からの指示を受け、14,000フィート（4,270m）から9,000フィート（2,740m）への降下を開始しました。その後、ポートランド国際空港の滑走路28Rが使用中であることが伝えられ、方位30度への右旋回が指示されました。956便は旋回方向を確認後、「方位30度に右旋回、了解」と返答しましたが、その後の交信は途絶えました。

20時09分、管制官は956便に方位300度への到達時に報告するよう指示しましたが、応答はありませんでした。レーダーからも機影が消えたため、20時15分に事故通知手続きが開始されました。

捜索と残骸の発見

事故発生後、ただちに捜索活動が開始されました。マックコード空軍基地からF-106戦闘機が、ポートランド空軍基地からはHU-16水上飛行機が派遣され、956便の捜索が行われました。事故当時、日没から1時間以上が経過し、雲の上限は2,900フィート（880m）、天候は雨でした。

翌日の午後、捜索隊はフッド山から西南西約16km離れたフッド山国有林内で、956便の残骸を発見しました。残骸は、標高1,170mのサーモン山地帯の、標高1,250mの尾根東側斜面にありました。機体は右に30度傾き、3～4度の上昇姿勢で、方位265度を向いて衝突していました。機体は多数の木を巻き込み、斜面に激突後約45m滑落しました。主な残骸は標高1,190m地点で発見され、激しい火災が発生していました。

調査結果

残骸からはフライトデータレコーダー（FDR）とコックピットボイスレコーダー（CVR）が回収されましたが、データ読み取りに成功したのはフライトデータレコーダーのみでした。国家運輸安全委員会（NTSB）による調査の結果、次のようなことが判明しました。

航空機は耐空性があり、パイロットは適切な資格を有していた。
機体やシステム、動力装置、部品に機械的な故障はなかった。
956便は高度9,000フィート（2,740m）までの降下を許可されていた。
956便は自動操縦で飛行していた。
約1,220mまで降下した後、水平飛行に移行していた。
* 衝突の2秒前に急な上昇を開始していた。

事故の具体的な原因は特定されませんでしたが、これらの調査結果は事故解明の手がかりとなりました。

ウエストコースト航空は、1968年に運行を停止しました。

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