ウキヤガラ

ウキヤガラ（浮矢幹）の詳細解説

ウキヤガラ（学名: Bolboschoenus fluviatilis）は、単子葉植物に属するカヤツリグサ科ホタルイ属の植物です。水辺を主な生息地とし、特に池などの浅い場所に群落を形成することが特徴です。抽水性植物として知られ、水中で根を張りながら、茎や葉を水面に出して生育します。

特徴

ウキヤガラは、その独特な形態で他の植物と区別できます。

• - 匍匐茎: 水底の土壌中を這うように伸びる太く長い匍匐茎を持ちます。この匍匐茎から、垂直に茎が立ち上がります。
• - 花茎: 花茎は非常に高く、1.5メートルを超えることもあります。単独で生えることもありますが、数本が束になって、根元で塊を形成することもあります。茎の断面は三角形をしています。
• - 節と苞葉: 花茎には複数の節があり、各節には苞葉が付いています。基部の苞葉は、葉身部分が小さく、ほとんどが鞘状になっています。
• - 苞: 花茎の先端からは、数枚の葉身が発達した苞が傘のように広がります。この苞の中心から花序が伸び出します。
• - 花序: 花序は散形状で、2〜3個の小穂が塊となって短い枝の先につきます。
• - 小穂: 小穂は先の尖った卵形で、長さは1〜2cm程度、茶色をしています。多数の花を含み、鱗片が螺旋状に並んでいます。鱗片の先端には短い芒があります。
• - 果実: 果実は倒卵形で、断面は三角形をしています。周囲には6本の針状の付属物が並んでいます。

生育環境

ウキヤガラは、北海道から九州にかけての浅い池の周辺部などに生育します。その名前「浮矢幹」は、真っ直ぐに伸びる花茎に由来しています。また、日本以外にも朝鮮半島、中国、北アメリカにも分布しています。

近縁種との比較

ウキヤガラには、いくつかの近縁種が存在しますが、それらは一般的にこの種よりも小柄です。

• - *コウキヤガラ (S. maritimus L.): 海岸の湿地に生育する種で、ウキヤガラよりもやや小柄です。小穂の柄が短く、頭状に集まる点が異なります。また、果実がやや偏平なのも特徴です。日本全国をはじめ、アジア、ヨーロッパに広く分布しています。
• - イセウキヤガラ (S. planiculmis F. Schmidt.):* さらに小型で、せいぜい80cm程度までしか成長しません。葉が少なく、苞は一つで茎の延長のようになっているため、サンカクイに似ています。汽水の混じる河口域に生息し、北海道、本州、東アジア北部に分布します。

参考文献

• - 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎他『日本の野生植物　草本I 単子葉植物』,(1982),平凡社
• - 北村四郎・村田源・小山鐵夫『原色日本植物図鑑 草本編(III)・単子葉類（改定49刷）』,(1987),：保育社

これらの文献は、ウキヤガラの詳細な情報を得る上で非常に有用です。

ウキヤガラは、その特徴的な形態と生態から、水辺の生態系において重要な役割を果たしている植物です。観察する際には、その細部まで注意を払うと、より深くその魅力を理解できるでしょう。

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