ウクライナ侵攻におけるロシアの義勇大隊

ウクライナ侵攻におけるロシア義勇大隊の詳細解説

2022年春以降、ロシアはウクライナ侵攻のために、地域ベースの志願兵による義勇大隊を組織しました。これらの部隊は、国軍戦闘予備隊「BARS」の代替として創設され、地域ごとに独自の名称と特徴を持っています。

義勇大隊の編成目的と実態

専門家の分析によれば、義勇大隊の主な目的は秘密裏の動員であり、志願兵には必ずしも軍事経験は求められませんでした。ロシアは、経済的に困窮し、孤立した地域を中心に採用活動を展開しました。志願兵は予備役の地位を与えられ、ロシア国防省と数ヶ月の短期契約を結びました。この採用活動は、国防省と地方当局が共同で責任を負い、一部の部隊は地方予算からの資金提供を受けています。例えば、「モスクワ大隊」は、非公式に「ソビャニン連隊」とも呼ばれています。チェチェンでは、アフマト連隊の志願兵がロシア特殊部隊大学で訓練を受けています。

編成状況と規模

ノーヴァヤ・ガゼータ・ヨーロッパの調査によると、既に前線に送られたか、編成中の地域大隊は52に達し、合計で9,500人から20,000人の兵力が動員されたと推定されています。しかし、紛争情報チームのルスラン・レヴィエフによれば、これらの大隊の多くは戦闘作戦に参加しておらず、訓練と部隊編成のために新しい第3軍団に配属されているとのことです。

プロパガンダと動員

メディアの推計では、2022年8月時点で、ロシア連邦のイスラム教徒地域（ダゲスタン、バシコルトスタン、チェチェン、タタールスタンなど）が、ロシア・ウクライナ戦争における死者数の上位を占めています。これは、プロパガンダが「ロシア人と正統派キリスト教徒の保護」を訴えてきたことと矛盾しています。動員を促すために、過去の英雄のイメージが国家レベルと宗教レベルの両方で利用されています。例えば、バシコルトスタンでは、ソ連の将軍ミニガリ・シャイムラトフが動員の象徴として用いられていますが、プロパガンダはロシア帝国と戦ったサラヴァト・ユラーエフやイマーム・シャミールのような人物のイメージも利用しています。

地域ごとの義勇大隊一覧

以下に、地域ごとの主な義勇大隊のリストを示します。

アムール州: 電動ライフル大隊「アムルスキー」
バシコルトスタン共和国: мотострелковые батальоны имени ミニガリ・シャイムラトフ、アレクサンドル・ドスタワロフ、「ワタン」、「セヴェルヌイェ・アムール」、「バシコルトスタン」第31自動車化狙撃連隊
ブリヤート共和国: 「バイカル」大隊
タゲスタン共和国: 「カスピアン」大隊
エカテリンブルク: 「ウラン」大隊
ザハイカリエ地方: 「ダウルスキー」大隊
イルクーツク州: 「アンガラ」大隊
ケメロヴォ州: 「クズバス」大隊
キーロフ州: 「ヴィヤトカ」大隊
クラスノダール地方: コサック大隊「テレク」、「クバン」、「エニセイ」、「エルマック」、「タブリダ」、旅団「ドン」
レニングラード州: 砲兵大隊「ネフスキー」、砲兵師団「ラドガ」、「レニングラード」
リペツク州: ガウビッツ砲兵師団イワン・フリョーロフ記念
マリ・エル共和国: 「エデン」大隊、「ポーランド」大隊、「アクパトル」大隊
モスクワ: 「ソビャーニン連隊」、「モスクワ」（第76親衛空挺師団の一部）
ムルマンスクとアルハンゲリスク地域: 「アルハンゲリスク」
ニジニ・ノヴゴロド: 「アムール」戦車大隊（クジマ・ミーニンにちなんで命名）
ノヴォシビルスク州: 「ベガ」大隊
オレンブルク州: 「ヤイク」自動車化狙撃大隊
オムスク: 修理中隊「イルティシュ」、物資支援中隊「アヴァンガード」、医療部隊「オム」
ペルミ地方: 「パルマ」自動車化狙撃中隊、「モロット」戦車大隊
沿海地方: 「タイガー」大隊
サマラ州: 「サマルスキー」大隊、ロシア国家親衛隊「オプロート」大隊
サンクトペテルブルク: 「クロンシュタット」、「ネヴァ」、「パブロフスク」義勇大隊、「オーロラ」戦車大隊
北オセチア共和国と南オセチア: 「アラニア」大隊
タタールスタン共和国: 「アルガ」大隊、「タイマー」大隊（「アルガ」は「前方」、「タイマー」は「鉄」を意味する）
トヴェリ州: 「ヴォルガ」戦車大隊
トムスク州: 「トーヤン」大隊
チュメニ州: 「エルマック」大隊、「シベリア」大隊、「タイガ」大隊、「トボク」大隊
チュメニ: 「トボル」工兵大隊、「タイガ」狙撃中隊、「シビル」砲撃大隊
ウリヤノフスク州: 「スヴィヤガ」大隊、「シンビルスク」大隊
ハバロフスク地方: 通信大隊「ゲネラル・コルフ」
ХМАО: 「ウグラ」大隊
チェリャビンスク州: 「ユジノウラレツ」大隊、「南ウラル」大隊
チュヴァシ共和国: ロシア連邦第1251自動車化狙撃連隊の一部としての「アタル」通信大隊
* サハ共和国: 「ブートゥール」大隊

まとめ

ウクライナ侵攻におけるロシアの義勇大隊は、地域ごとの特色を持ちながら、秘密動員の一環として編成されました。これらの部隊は、ロシア軍の兵力不足を補うために利用され、各地のプロパガンダ戦略によって動員が推進されました。今後もこれらの義勇大隊の動向が注目されます。

もう一度検索