チュメニ

チュメニ：シベリアの歴史と産業が交錯する都市

チュメニ（ロシア語: Тюмень）は、ロシア連邦シベリア西部に位置し、チュメニ州の州都です。トゥラ川のほとりに広がり、約81万人が暮らすこの都市は、その歴史的背景と豊かな天然資源により、シベリアにおける重要な拠点となっています。

歴史

チュメニの歴史は16世紀に遡ります。1586年、シビル・ハン国がロシアの攻撃を受けていた時代に、ロシア人の東方遠征を支援する目的で建設されました。以来、チュメニは「シベリアへの玄関口」として重要な役割を担い、水路と陸路が交わる地点として、交易都市・産業都市として急速に発展しました。1885年にシベリア鉄道が開通すると、その発展はさらに加速しました。

この地は、中央アジアからヴォルガ川流域を結ぶ交易路がトゥラ川を渡る場所に位置し、長年にわたりシベリア南部の遊牧民が支配権を争っていました。16世紀には、コサックの攻撃によりシビル・ハン国の重要都市が破壊された後、その跡地にチュメニの要塞が築かれました。その後もタタール人やカルムイク人による攻撃を受けましたが、次第に安定し、職人などの庶民が集まるようになりました。

18世紀初めには、チュメニは西方のヨーロッパ・ロシアと東方の清帝国、南方の中央アジアを結ぶ交易都市として栄えました。また、革職人や鍛冶屋など多くの職人が集まる手工業の中心地でもありました。19世紀に入ると、シベリア初の蒸気船が建造され、電信や上水道も整備されました。しかし、1885年のシベリア鉄道の開通がチュメニの発展を決定づけました。鉄道網の最東端として、ヨーロッパ・ロシアからシベリアへの貨物がチュメニで積み替えられ、交通の要衝として、西シベリアの交易と産業の中心となりました。

20世紀に入ると、チュメニは試練と飛躍の両方を経験しました。ロシア内戦時には一時的に白軍に支配されましたが、ソ連時代には西シベリアの重要な産業都市となり、第二次世界大戦中には疎開してきた工場が集積しました。特に、1960年代にチュメニ州付近で油田とガス田が発見されると、チュメニはソビエトの石油産業の首都として、第二の人口・経済成長期を迎えました。しかし、急激な人口増加は都市インフラの整備を遅らせ、無秩序な都市拡大を招いた側面もあります。

地理

チュメニはトゥラ川沿いの高台に位置し、その周辺が伝統的な町の中心を形成しています。市内には中央区、レーニンスキー区、カリーニンスキー区、ヴォストチヌイ区の4つの行政区があります。歴史地区にはチュメニ創建の地や市役所、第二次世界大戦記念碑などがあり、歴史的な出来事の舞台となっています。中央広場周辺には州政府や知事官邸などの行政組織が集まり、モーリス・トレーズ通りは交通の中枢となっています。トゥラ川は市の中心を貫き、増水時には広い氾濫原を形成します。

チュメニの気候は湿潤大陸性気候で、暑く湿度の高い夏と長く寒い冬が特徴です。1月の平均気温はマイナス16.7度、7月の平均気温は18.6度です。

人口

チュメニの人口は、鉄道開通後に爆発的に増加し、20世紀初頭には3万人を超えました。第二次世界大戦時の工場疎開や1960年代の油田発見を経て人口は急増し、2020年には約81万人に達しました。民族構成は多様で、ロシア人をはじめ、ウクライナ人、タタール人などが多く暮らしています。

宗教

チュメニは創建時からシベリアの宗教的中心であり、市内にはロシア正教会の聖堂、モスク、シナゴーグ、ローマ・カトリックの教会があります。かつては多くの聖堂や修道院がありましたが、ソ連時代には閉鎖・解体されたものもあります。近年、宗教施設は再建が進められています。

経済

チュメニは、ロシアの石油・天然ガス産業の重要な拠点であり、大手石油企業や採掘技術関連企業が集積しています。また、機械工業、化学、医療、文化、教育の中心地でもあります。先端技術団地や高度医療を提供する連邦医療センターも所在しています。

文化・教育

チュメニは西シベリアの芸術や娯楽の中心地であり、劇場や博物館、美術館、音楽ホールなどがあります。また、多くのスポーツ選手や文化人を輩出しており、教育機関も充実しています。チュメニ産業大学やチュメニ国立大学など、高等教育機関が数多く存在します。

交通

チュメニ駅はシベリア鉄道の主要駅であり、市内交通はバスやタクシーが利用できます。ロシチノ空港からは、モスクワやサンクトペテルブルクなどの主要都市への定期便が運航されています。ただし、市内の道路事情は悪く、慢性的な渋滞が発生しています。

著名な出身者

グリゴリー・ラスプーチン、アーヴィング・バーリン、ユーリー・グリャーエフ、タマーラ・トゥマーノワ、ヴラディスラフ・クラピーヴィンなどがチュメニの出身者です。

姉妹都市

チュメニは、ベルン（スイス）、ブレスト（ベラルーシ）、カルガリー（カナダ）、ツェレ（ドイツ）、大慶（中華人民共和国）、ヒューストン（アメリカ合衆国）と姉妹都市提携を結んでいます。


チュメニは、歴史的な街並みと現代的な都市機能が共存する魅力的な都市です。シベリアの歴史と産業の中心地として、今後もその発展が期待されます。

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