ウクライナ国

ウクライナ国の歴史

ウクライナ国（Українська Держава）は、1918年4月29日から同年12月14日まで中央ウクライナを中心に存在した国家です。この時期のウクライナは、ロシア帝国の崩壊後に多数の独立国家が形成された状況の中で、特異な立場を占めていました。ウクライナ国の成立は、単なる地政学的な動きに留まらず、国内外のさまざまな利害関係が交差した結果でもありました。

成立の背景

二月革命の結果、旧ロシア帝国内には多くの独立国家が誕生しましたが、ウクライナ地区でもウクライナ人民共和国が成立しました。この政府、ウクライナ中央ラーダは、ドイツ帝国とオーストリア・ハンガリー帝国と連携しながらボリシェヴィキと戦っていました。しかし、若手中心の経験不足な組織であったため、ドイツ軍から期待された食料調達に失敗し、結果的に1918年4月にドイツ軍によって解散させられました。

その後、旧ロシア帝国の軍人であるパウロー・スコロパードシクィイ将軍が新たにウクライナ国家の代表に選ばれました。彼は自由コサック民兵団を統率し、ウクライナ人の間で人気の高いコサックという名誉と称号を用い、「全ウクライナのヘーチマン」を自称しました。こうして新たに「ウクライナ国」が正式に成立し、スコロパードシクィイはホーネ内閣に代わる「ヘーチマーン政府」と呼ばれる政権を樹立します。

政治と社会

ウクライナ国は、ウクライナ人民共和国が採用した社会主義的な平等政策とは異なり、非常に反動的な政策を展開しました。スコロパードシクィイの背景には旧帝国の貴族層が存在し、彼が所有する農地は再び地主に返還されました。このような政策は、広範囲にわたる農民の不満を引き起こし、ドイツ帝国の影響のもと、ウクライナ人の間にはドイツ軍への敵意が根付いていきました。

特に、食料の徴発や農村の支配構造の変化が農民の生活を苦しめ、各地で反乱や不服従が発生します。さらには、アイヒホルン元帥が暗殺される事件も起き、混乱の度合いは増していきました。これはスコロパードシクィイの政府が直面する厳しい現実を示すものでした。

短命に終わる政権

1918年11月、ドイツ軍の敗北が確実になると、ヘーチマーン政府は支持を集める試みを行いましたが、ほとんど成功しませんでした。ドイツ軍が撤退すると、ウクライナ国はさまざまな勢力の攻撃にさらされ、崩壊の危機に直面します。スコロパードシクィイは、自身の軍隊を指揮することなく、ドイツに逃亡します。

その後、シモン・ペトリューラが率いるディレクトーリヤ軍が農村に強い支持を持ち、ウクライナ国軍との間で短い戦闘が発生します。最終的に、ディレクトーリヤ軍は優れた装備と戦力を背景に抗争を有利に進め、ウクライナ国は12月14日に儚くも消え去りました。新たに成立したディレクトーリヤ政府は、国号をウクライナ人民共和国に戻し、まさにウクライナ国の歴史は短命だったことを象徴しています。

軍事面

ウクライナ国軍は、旧ロシア帝国軍やウクライナ人民共和国軍の装備を引き継ぎ、更にはドイツ軍からも支援を受けていました。ただし、地上部隊の装備はほとんどが旧式で、新型の航空機が存在したとはいえ、ペトリューラ軍に対抗するには至りませんでした。組織もコサック民兵や学生部隊などの寄せ集めであり、戦闘力は必ずしも高くありませんでした。

海軍は黒海で赤軍との戦闘に備えていましたが、実質的な戦闘は数回にとどまり、ウクライナ国の崩壊後、海軍の艦隊は他国によって接収されました。これらの事実は、ウクライナ国がいかに内部的・外部的な困難に直面していたかを示しています。

ウクライナ国は、その短い歴史の中で多くの困難に直面しましたが、ウクライナの独立国家としての道筋には一つの重要な教訓が残っています。国家の成り立ちと崩壊を通じて、ウクライナの民族意識は少しずつ育まれていくこととなりました。

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