ウクライナ正教会・キエフ総主教庁

ウクライナ正教会・キエフ総主教庁（2018年解散）

ウクライナ正教会・キエフ総主教庁（UOC-KP）は、かつてウクライナに存在した正教会組織です。2018年に新たな「ウクライナ正教会」が設立されたことに伴い、その歴史に幕を閉じました。

概要

キエフ総主教庁は、ウクライナ国内で最も信者数の多い教会でした。本拠地は首都キエフの聖ヴォロディームィル大聖堂に置かれていました。ある調査によると、ウクライナ国民の約32.4%がキエフ総主教庁に所属していたと回答しています。

しかし、その承認は複雑でした。モスクワ総主教庁系のウクライナ正教会や、コンスタンティノープル総主教庁と繋がりを持つ教会からは、長らく承認されていませんでした。2014年のロシアによるクリミア併合を機に、反ロシア感情が高まり、ロシア正教会からの分離独立を求める動きが活発化しました。その結果、2018年10月、コンスタンティノープル総主教庁がキエフ総主教庁の独立を承認しました。

キエフ総主教庁を率いていたのはキエフ総主教でしたが、フィラレート総主教はロシア正教会から破門されていました。しかし、コンスタンティノープル総主教庁の独立承認後、各正教会もフィラレート総主教を宗教上の主教として認めました。

教義的な面では、多くの正教会がキエフ総主教庁の聖体礼儀（聖餐）を含む機密の有効性を否定していませんでした。相互領聖も行われていましたが、他地域の正教会の聖職者がキエフ総主教庁の聖職者と共同で奉神礼を行うには、当該教区を管轄する主教の判断が必要でした。

正教会は原則として一国に一つの教会組織を置きます。これは、ロシア正教会、ギリシャ正教会、ルーマニア正教会、日本正教会などと同様です。これらの教会はそれぞれ独立していますが、信仰している教義は共通です。

歴史

1990年6月、在米国ウクライナ正教会の府主教ムスティスラウが「ウクライナと全ルーシの総主教」として、ウクライナ独立正教会の首座主教に選出されました。彼は、ウクライナ独立正教会を創設した主教たちの最後の生き残りでした。同年11月には、聖ソフィア大聖堂で着座式が行われました。1992年には、「キエフと全ルーシ＝ウクライナの総主教」として改めて選出され、ウクライナ正教会・キエフ総主教庁が正式に成立しました。これはウクライナ初のキエフ総主教でしたが、2018年にコンスタンティノープル総主教庁が独立教会として承認するまで、他の正教会からの承認は得られませんでした。

1993年6月にムスティスラウ総主教が死去すると、同年10月にはヴォロディームィルが後継の総主教となりました。しかし、ヴォロディームィルも1995年に死去。彼の埋葬式はキエフの聖ソフィア大聖堂で行われましたが、その際、葬列と警察部隊の間で衝突が起こりました。最後の総主教はフィラレートであり、1995年10月に就任しました。

2018年12月15日、ウクライナ独立正教会と統合し、新たな「ウクライナ正教会」が発足しました。

再独立の主張

2019年6月19日、フィラレート名誉総主教は「会議」を召集し、ウクライナ正教会・キエフ総主教庁の「復活」を一方的に宣言しました。

彼はその理由として、2018年12月15日にコンスタンティノープル総主教庁の会議があり、そこでウクライナ正教会の独立に関する文書「トモス」を得るために、形式的にキエフ聖庁の存在を諦めざるを得なかったと述べました。そして、今回の「会議」でキエフ聖庁の廃止を無効化したと主張しました。

これに対し、ウクライナ正教会は同日発表した声明で、フィラレートが招集した「会議」は無意味であり、法的効力を持たないと宣言しました。また、フィラレートをウクライナ正教会の構成員として残すものの、キエフ教区を管理する権利を剥奪することを決定しました。

日本国内における活動

ウクライナ正教会・キエフ総主教庁の日本事務局は、東京都三鷹市にあります。

関連項目

ウクライナ正教会 (2018年設立)
ウクライナ独立正教会
ウクライナ正教会 (モスクワ総主教庁系)
キエフ府主教区
ウクライナ教会
ウクライナの宗教

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