ウクライナ蜂起軍

ウクライナ蜂起軍（UPA）について

ウクライナ蜂起軍（ウクライナ語: Українська повстанська армія、英語: Ukrainian Insurgent Army; UPA）は、1942年に設立された武装組織で、主に西ウクライナを拠点に反体制活動を行いました。彼らは第二次世界大戦中、ソ連とナチスドイツに対抗するためのパルチザン活動を展開しました。特に、ソ連崩壊後の現在では彼らはウクライナ国家の独立のために戦った英雄として評価されていますが、ロシアやポーランドの視点では「ナチスの協力者」や「戦争犯罪者」とされ、評価が分かれています。

背景

1940年代初頭、ウクライナはソ連の一部として厳しい時代を迎えていました。1932年から1933年にかけて発生したホロドモール（大飢饉）や、続く大粛清により、農民たちの間には強い反ソ感情が芽生えていました。1941年、独ソ戦が始まると、ドイツ軍が赤軍を撃退し、農民たちはドイツを解放軍と見なし、大勢がドイツ軍に志願しました。しかし、ナチスの厳しい政策に対する反感が高まり、やがてウクライナ全土に抵抗運動が広がっていくことになります。

歴史

1942年10月、ウクライナ蜂起軍はヴォルィーニで設立され、ロマン・シュヘーヴィチがその指導者となりました。初期のUPAは、赤軍パルチザンやドイツ軍に対しての戦闘を通じて自らの実力を向上させ、1943年から本格的に武装闘争を開始しました。ドイツの基地や輸送隊に対する襲撃を繰り返し、同時に親ソのパルチザンにも攻撃を行いました。ドイツ軍は反撃として村を襲撃し、UPAの活動を厳しく制圧しました。

1944年、ソ連軍の反攻が強まる中、UPAはドイツ軍と一時的な協力関係を結びました。このことが「ナチス協力者」とのレッテルを生む要因となり、同年5月にはドイツ軍がウクライナから撤退し、UPAはソ連に対しても武装闘争を継続しました。しかし、1945年に第二次世界大戦が終わると、ソ連はUPAの殲滅に乗り出し、民間人に対する弾圧や追放が行われました。1950年、シュヘーヴィチが戦死するとUPAは実質的に活動を停止しますが、その後も残党が散発的に抵抗を続けました。

戦争犯罪

ウクライナ蜂起軍の評価は、特に彼らが関与した民族浄化やホロコーストへの関与によって二分されます。UPAは1943年から1945年にかけて、ポーランド人に対する虐殺を行い、多数の犠牲者を出しました。これが後のポーランド政府による「ヴィスワ作戦」の実施を正当化する根拠となる一因となりました。さらに、UPAの前身であるOUNのメンバーがユダヤ人に対する暴力行為にも関与しており、これらの行為が後の評価に影を落としています。

ウクライナにおける名誉回復

ウクライナ蜂起軍の歴史は、ソ連及びロシアの文脈では極めて否定的に捉えられていますが、1991年の独立以降、特に2014年のマイダン革命以降にその評価は著しく変化しました。新たに就任した政府は、ウクライナ蜂起軍に対する名誉回復を進め、2014年からは「祖国防衛者の日」をUPAの創設日である10月14日に移動させました。これにより、ウクライナの歴史認識は従来のものから大きく転換し、UPAは国家独立の象徴としての地位を確立しました。

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