ウジャイフ・ブン・アンバサ

ウジャイフ・ブン・アンバサ（ʿUjayf b. ʿAnbasa）は、9世紀初頭のアッバース朝において、カリフのマアムーンとムウタスィムの下で重要な役割を果たした軍事指導者です。彼の生涯は、アッバース朝の政治と軍事の動向を理解する上で貴重な事例を提供します。

生い立ちと初期の活動

ウジャイフの家族に関する詳細はほとんど残されていません。しかし、ホラーサーン地方またはマー・ワラー・アンナフル（中央アジアのアムダリヤ川とシルダリヤ川の間）の出身であると考えられています。彼は、9世紀初頭にサマルカンドで反乱を起こしたラーフィー・ブン・アッ＝ライスの配下として史料に登場します。しかし、808年にカリフのハールーン・アッ＝ラシードが自らホラーサーンに遠征すると、ウジャイフはフェルガナやタシュケントの多くの人々とともにラーフィーから離反しました。

ウジャイフは、ムウタスィムが自身の護衛として雇った他の東方のペルシア人武官たちと同じ社会集団に属していたと考えられています。彼らは、小規模な支配者の公子であったか、地主階級（デフカーン）から徴用されたと考えられています。

将軍としての台頭

ウジャイフは、カリフのマアムーンの下で頭角を現しました。829年には、ペルシア北部への遠征に参加し、ビラール・アッ＝ディバービーが起こしたハワーリジュ派の反乱を鎮圧するなどの功績を挙げました。マアムーンの異母弟で後継者となったムウタスィムの下でも、その地位を維持し続けました。834年には、イラク南部でジャート族と戦い、ビザンツ帝国領の小アジアにおいて数多くの軍事作戦を指揮しました。

ムウタスィムは、自身の新しい首都であるサーマッラーにウジャイフとその部隊のための宿営地を与えました。また、報酬としてサマルカンドに近いイシュティハンの町の市場の歳入を与えました。

カリフとの対立と陰謀

しかし、ウジャイフの運命は暗転します。838年、ムウタスィムがビザンツ帝国の都市アモリオンに対する大規模な軍事行動を起こした際、ウジャイフは軍の補給をめぐってカリフと対立しました。さらに、他の侮辱的な扱いも受けたことから、ウジャイフとその配下の者たちはカリフに対する陰謀を計画し始めました。

ウジャイフは、833年の時点でムウタスィムの即位に反対していたとされています。彼は、ムウタスィムの甥にあたるマアムーンの息子アル＝アッバースをカリフに推すアッバース朝の軍事組織内の有力なグループを率いていました。この時はアル＝アッバースが叔父に忠誠を誓ったことで事態は収まりましたが、その後、ムウタスィムと最高位のトルコ人軍司令官であるハイダル・ブン・カーウース・アル＝アフシーン、アブー・ジャアファル・アシナースを殺害する陰謀が企てられました。

陰謀の露見と処刑

しかし、陰謀は露見し、ウジャイフを含む首謀者たちは逮捕され、処刑されました。ウジャイフの死は、アッバース朝の政治における権力闘争と、軍事指導者たちの複雑な関係を浮き彫りにしています。

ウジャイフ・ブン・アンバサは、アッバース朝の最盛期を支えた一方で、その内部の矛盾と対立に巻き込まれ、悲劇的な結末を迎えた人物です。彼の生涯は、当時の政治情勢や社会構造を理解する上で重要な手がかりとなります。

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