ウスバサイシン

ウスバサイシン（薄葉細辛、学名：Asarum sieboldii Miq.）は、ウマノスズクサ科カンアオイ属に分類される多年草の一種です。別名としてAsiasarum sieboldii、Asarum sieboldii var. cineoliferum（カワリバウスバサイシン）があります。

分布と生育環境

ウスバサイシンは、中国大陸中南部、朝鮮半島、そして日本に分布しています。日本では、本州の中部地方、関東地方から中国地方にかけて広く分布し、山地のやや湿った林下に生育しています。かつて関東地方以北、主に東北地方でウスバサイシンとされていたものは、2007年にトウゴクサイシン（Asarum tohokuense Yamaji et Ter.Nakam.）として新種記載されました。

特徴

ウスバサイシンの花期は3月から5月頃で、暗紫色の花を咲かせます。花弁のように見える部分は萼です。アオイ類と比較して葉が薄く、味が辛いことが和名の由来となっています。種子はアリによって運ばれます。日本国内に分布するウスバサイシンは、形態や含有成分の違いから複数の亜種に分けられています。

ウスバサイシンの種子は、上胚軸休眠種子と呼ばれる特性を持っています。これは、植物体が種子を飛散させる状態になっても、種子内部の胚が十分に成熟していない状態を指します。そのため、種子は湿潤な環境で一定期間を過ごす間に胚が肥大成長し、発芽に至ります。成熟に適した温度は15℃で、約50日程度とされています。10℃や25℃では、100日経過しても成熟は進みません。

生薬としての利用

ウスバサイシンまたはケイリンサイシン（Asarum heterotropoides var. mandshuricum、シノニムAsarum heterotropoides var. mandshuricum）の根および根茎は、細辛（サイシン）という生薬として利用されます。細辛には解熱、鎮痛作用があり、小青竜湯、麻黄附子細辛湯、立効散などの漢方方剤に配合されます。

安全性

ウスバサイシンの地上部にはアリストロキア酸が含まれており、腎障害を引き起こす可能性があるため、注意が必要です。

その他

ヒメギフチョウの食草として知られています。
カンアオイ属に分類されます。

参考資料

林弥栄『日本の野草』山と溪谷社〈山溪カラー名鑑〉、2009年10月。ISBN 9784635090421。
大橋広好・門田裕一・木原浩他編『改訂新版 日本の野生植物 1』2015年、平凡社

外部リンク

Listing of Botanical Ingredients of Concern-FDA/CFSAN
ウスバサイシンの栽培について 東京都健康安全研究センター 東京都薬用植物園

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