ウダイカンバ

ウダイカンバ（鵜松明樺）とは

ウダイカンバ（学名: Betula maximowicziana）は、カバノキ科カバノキ属に分類される落葉高木です。山地に自生し、別名としてサイハダカンバ、マカバ、マカンバとも呼ばれています。

名前について

ウダイカンバの名前は、樹皮が濡れても燃えやすく、松明として利用されたことに由来します。特に鵜飼いの松明として使われたことから「鵜松明樺（ウダイカンバ）」と呼ばれるようになったと言われています。また、アイヌ語では「本当の樺の皮が採れる木」という意味で「シタッニ」と呼ばれていました。北海道では、樹皮を「ガンピ」と呼び、靴底や焚き付けに使っていましたが、高級紙の原料となるジンチョウゲ科のガンピとは異なる樹種であることに注意が必要です。

分布と生育環境

ウダイカンバは、北海道から福井県、岐阜県以北の本州にかけて分布しています。遺伝的には、北海道から東北北部に分布する北部集団と、東北南部から本州中部に分布する南部集団の2つに分けられると考えられており、北上山地などでは両者が混在する地域も存在します。

形態

ウダイカンバは、樹高30メートル、胸高直径1メートルに達する落葉広葉樹の高木です。樹皮は灰白色で、横に長い筋が目立ちます。シラカンバの樹皮に似ていますが、より黒ずんで見え、幹回りが太く、横に剥がれるのが特徴です。若い枝は暗紫褐色で、短枝が発達します。葉は広卵形をしており、花期は5月から6月にかけてです。冬芽は互生し、雄花序以外は鱗芽で、芽鱗は4～5枚あります。雄花序の冬芽は裸芽で枝先に付き、雌花序の冬芽は短枝の先に付きます。葉痕は半円形で、維管束痕が3個あります。

生態

ウダイカンバは陽樹であり、山火事跡地や伐採跡地などの無立木地に侵入し、素早く成長します。大木は急斜面の上部で、土壌がB型の場所に多く見られます。また、埋土種子を形成し、土壌中に大量の休眠種子を蓄えており、好適な条件になるのを待っています。埋土された種子は、5年経過しても50％以上が発芽するとの報告もあり、地表の土壌やササを除去するだけで大量に発芽することが確認されています。

クスサンという大型の蛾は、様々な植物の葉を食べますが、ウダイカンバはシラカンバと比較して、クスサンにとって体重増加が良好な餌資源であることが報告されています。

人間との関わり

ウダイカンバの木材は、ねじれが少なく強度も高く、加工しやすいことから、住宅建材、家具、楽器など幅広い用途で利用されています。特に、ピアノのハンマーや、第二次世界大戦末期には航空機のプロペラにも採用されていました。心材は淡い赤みを帯びた褐色をしており、その色合いから家具業界では「サクラ」と呼ばれることもあります。一方で、心材の褐色部分が少なく、白色の辺材が多い木材は、そのコントラストから「メジロカンバ」または「メジロカバ」と呼ばれ、木目を活かした突板などに利用されます。かつては一般的なウダイカンバと比較して安価で流通していましたが、21世紀に入り、天然林の伐採量が減少したことから流通量が減少し、風合いも評価されるようになり、現在では高級材として扱われています。

参考文献

鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『樹皮と冬芽：四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社〈ネイチャーウォチングガイドブック〉、2014年10月10日、132頁。ISBN 978-4-416-61438-9。

関連項目

シラカンバ
* ダケカンバ

もう一度検索