ウティカ

ウティカ：古代都市の盛衰

ウティカ（Utica）は、現在のチュニジアに存在した古代都市であり、カルタゴの北北西約50キロメートルに位置していました。現在のGhar el Melh Lake付近に位置し、かつてはメジェルダ川に面した港湾都市として栄えましたが、川が運ぶ土砂によって港が埋没し、都市は徐々に衰退、最終的には放棄されました。また、イテュケとも呼ばれていました。

都市の起源と発展

ウティカは、フェニキア人によって紀元前1101年頃に建設されたとされていますが、遺跡から発掘された最も古い出土品は紀元前8世紀のものであり、考古学的な証拠は紀元前8世紀に遡ります。ウティカの名が歴史に初めて登場するのは、紀元前6世紀半ば頃のカルタゴとローマの間の条約においてです。

この条約によると、ウティカはカルタゴの支配下にありながらも、独自の政治体制を確立していました。スフェス（最高責任者、ローマのコンスルに相当）、民会、元老院などを組織し、カルタゴに従属しながらも一定の自治権を保持していたと考えられています。この自治体制が、ウティカの都市としての独自性を育み、発展を支える要因となりました。

ポエニ戦争とローマの支配

カルタゴとローマが地中海の覇権を争ったポエニ戦争において、ウティカはカルタゴ側の一翼を担いました。第二次ポエニ戦争では、ローマのスキピオ・アフリカヌスとヌミディア王シュファクスがウティカ近郊で激戦を繰り広げました。紀元前146年にカルタゴが滅亡した後、ウティカはローマの都市として組み込まれ、アフリカ属州の州都として発展を遂げました。

紀元前46年のタプススの戦いで敗北したマルクス・ポルキウス・カト（小カト）は、このウティカで自決しました。彼の死後、カトは「ウティカのカト（カト・ウティケンシス）」として称えられ、共和主義の象徴として後世に語り継がれることとなりました。

ローマ衰退後のウティカ

アウグストゥス帝の時代になると、アフリカ属州の州都の地位は再建されたカルタゴへと移りましたが、ウティカはその後もローマ都市として繁栄を続けました。しかし、ローマ帝国の衰退とともに、ウティカもまた衰退の道を辿ります。ヴァンダル族や東ローマ帝国の支配下に入り、700年頃にはウマイヤ朝の統治下に置かれましたが、既に都市の荒廃は深刻な状況でした。最終的にウティカは放棄され、現在は砂漠に埋もれた遺跡が残るのみとなっています。

ウティカの遺跡は、古代都市の繁栄と衰退を物語る貴重な遺産であり、当時の人々の生活や文化を今に伝える重要な手がかりとなっています。

参考文献

長谷川博隆　『カルタゴ人の世界』　講談社学術文庫
Glenn E Markoe著　片山陽子訳　『フェニキア人』　創元社

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