ウドゥス・ブカ

ウドゥス・ブカの生涯と功績

ウドゥス・ブカ（兀都思不花）はモンゴル帝国の第8代カアン、ブヤント・カアン（仁宗アユルバルワダ）の庶子であり、その生涯は多くの政治的な動きの中で展開されました。彼の名前は、漢文史料『元史』に安王兀都思不花として記されており、その存在はモンゴル帝国の歴史において重要な位置を占めています。

幼少期と出自

ウドゥス・ブカについては、彼の母親に関する詳細な情報が乏しいものの、歴史家たちは彼の母がダルマシリ（答里麻失里）皇后である可能性が高いと推測しています。彼は仁宗アユルバルワダの息子であり、兄にはゲゲーン・カアン（英宗シデバラ）が存在しました。このように、ウドゥス・ブカはモンゴル王族の一員であり、帝国の権力闘争に自然と巻き込まれていくことになります。

初めての登場と政治的功績

ウドゥス・ブカの名前が初めて文献に現れるのは、クルク・カアン（武宗カイシャン）が即位した直後のことです。彼は越王トレと共に特別な称号を受けたことが記録されています。越王トレは、彼の父であるアユルバルワダに対するクーデターに協力したため、この称号はその功績を称えるものであり、ウドゥス・ブカもまた父の権力を支持する行動を取っていたと考えられています。

クルク・カアンの死後、ウドゥス・ブカは1315年に最高位の「安王」に任じられ、特別な金印を授与されました。これは彼の父の後を継ぐ形で行われたもので、彼がモンゴルの政治において重要な役割を果たすことを示しています。

政治的地位と北方出征

しかし、1316年にはブヤント・カアンが甥のコシラを排除しようとする事件が発生し、その結果、ウドゥス・ブカは北方のカラコルムに出向くこととなります。歴史的に見ても、北方の情勢は常に不安定であり、彼の出従は帝国の安定に寄与したとされています。1317年には軍需物資を支給されるなど、彼の役割は重要なものでした。

延祐5年（1318年）3月には、湖州路がウドゥス・ブカの分地として与えられるなど、彼は将軍としての地位を確立していきました。その後もブヤント・カアンからの支援を受け続け、彼の生活は安定していくように思われました。

兄弟間の冷遇とその後

しかし、ウドゥス・ブカの運命はその後の兄弟、ゲゲーン・カアンの即位によって大きく変わります。ゲゲーン・カアンは即位直後、ウドゥス・ブカを「安王」から「順陽王」に降格させ、その権限を削ぎました。この冷遇は、兄弟間の権力争いがどれほど厳しかったかを物語っています。そして、同年11月には彼の屋敷から財物が持ち出される事件も起きます。

謎に包まれた最期

その後のウドゥス・ブカに関する記録は途絶えてしまいますが、ゲゲーン・カアンの治世の末期には「兀魯思不花」という人物が登場します。これはウドゥス・ブカと同一人物である可能性が指摘されており、彼は兄弟による冷遇に憤りを抱いた末にゲゲーン・カアンの暗殺に加わったのではないかと考えられています。

ウドゥス・ブカの最期については詳細が伝わっていませんが、彼が降格された後に殺害されたとされ、流刑地で亡くなった可能性もあります。彼の人生は権力と野望、そして王族間の厳しい競争の象徴とも言える存在でした。

結論

ウドゥス・ブカは、モンゴル帝国の中でも波乱に満ちた生涯を送った人物であり、その足跡は現在も多くの歴史研究者の興味を引くものです。彼の生涯を通じて、権力の分配や王権の乱れ、そして家族間の争いという複雑な情勢が織りなされていました。

もう一度検索