ウルケシュ

古代都市ウルケシュ：テル・モザンの遺丘に眠る歴史

ウルケシュ（ウルキシュ、Urkesh、Urkish、Urkeš）は、現在のシリア北東部、タウルス山脈の麓に位置する古代都市国家の遺跡です。現代のカーミシュリーの街の近く、クルド人が多く住むアムダ（Amuda、Amûdê）から5kmほどハブール川を遡った場所にあるテル・モザン（Tell Mozan、Girê Mozan）という遺丘が、その跡地として知られています。

ウルケシュの起源と環境

ウルケシュは紀元前4千年紀に、おそらくフルリ人によって建設されました。しかし、その地にはさらに数世紀前から集落が存在していたと考えられています。当時の人々は、オオムギ、エンマーコムギ、裸麦などの穀物、ヒヨコマメやソラマメなどの豆類、イチジクなどの果物などを食料としていたと推測されています。年平均降水量は400mmから450mmと、穀物栽培に適した地域でした。現在ではステップ地帯が広がっていますが、青銅器時代にはもう少し湿潤な気候だったと考えられています。ただし、ハブール川の河谷が深いため、灌漑は川の周辺でのみ可能でした。

交易拠点としてのウルケシュ

ウルケシュは、ハブール川上流域の交易を支配下に置き、重要な役割を果たしました。特に、北のアナトリア高地から産出される豊富な銅を、西の地中海方面や東のザグロス山脈・ペルシャ方面へと運び、その交易によって大きな利益を得ていました。

歴史の中のウルケシュ

ウルケシュは、アッカド帝国の同盟国であり、その関係は王朝間の婚姻によって強化されたと考えられています。アッカド王ナラム・シンの娘、タラーム・アガデ（Tar'am-Agade）がウルケシュの王と結婚したという記録が残っています。

紀元前2千年紀には、ウルケシュは南のユーフラテス川沿いに位置するマリ王国の支配下に入りました。ウルケシュの王はマリの封臣となり、マリから任命された傀儡政権の王として統治を行いました。しかし、ウルケシュの人々はこれに強く反発し、マリ王国の文書庫から発掘された「マリ文書」には、ウルケシュの抵抗を物語る記述が数多く見られます。ある書簡には、マリの王がウルケシュの王に対し、「私のせいであなたの街の息子たちがあなたを嫌っているとは知らなかった。しかしあなたは私のものだ、たとえウルケシュの街は私のものではないとしても」と記されています。

ウルケシュの街は、紀元前2千年紀の半ば頃に放棄されたと考えられていますが、その理由は現在も解明されていません。

ウルケシュの王たち

ウルケシュの王族の系図や名前はほとんど分かっていませんが、以下の人名が都市国家ウルケシュの王のものであることが判明しています。初期の王たちは、フルリ人の称号である「エンダン」（endan）を名乗っていました。

トゥプキシュ・エンダン　Tupkish endan （紀元前2250年頃）
ティシュ＝アタル・エンダン　Tish-atal endan （在位時期不明）
シャタル＝マト　Shatar-mat （在位時期不明）
アタル＝シェン　Atal-shen （在位時期不明）
アン＝アタル　Ann-atal （紀元前2050年頃）
テーイッル　Te'irru （紀元前1800年頃）

「カルデアのウル」との関連性

ウルケシュを「Ur-Kesed」（「kesed」はカルデア（新バビロニア）を表す）と分解し、旧約聖書に登場する「カルデアのウル」（Ur of the Chaldees）と結びつける説も存在しますが、これは主流な見解ではありません。ウルケシュと「カルデアのウル」を結びつける現代の研究成果はなく、カルデア王国はメソポタミア最南部に位置しており、地理的にも大きく異なります。現在では、「カルデアのウル」はウルのことであると考えられています。

テル・モザンの発掘調査

テル・モザンの遺丘の発掘調査は、20世紀前半にイギリスの考古学者マックス・マローワン卿（Sir Max Mallowan）によって1930年代に開始されました。マローワンの妻であった推理小説作家アガサ・クリスティは、マローワンたちがこの遺跡を古代ローマのものと誤認し、発掘を中止したと記述しています。しかし、後の発掘調査ではローマ時代の居住跡は発見されていません。マローワンはその後、南に位置するチャガル・バザールの発掘へと移行しました。

発掘された遺跡の中でも重要なものとして、トゥプキシュ王の王宮、それに付随する魔術のための地下施設（アビ Abi）、神殿が頂上に位置し、その前に広場が広がる巨大な丘、住宅地区、墳墓群、そして市の外側と内側を囲む城壁などが挙げられます。

参考文献

Urkesh and the Hurrians: Studies in Honor of Lloyd Cotsen. Bibliotheca Mesopotamica 26/ Urkesh/ Mozan Studies 3. Malibu, CA: Undena Publications, 1998.
Buccellati, G. and S. Bonetti. 2003. "Conservation at the core of archaeological strategy. The case of ancient Urkesh at Tell Mozan." The Getty Conservation Institute Newsletter 18(1):18-21.

外部リンク

Urkesh excavations (official website)
archaeobotany at Tell Mozan (Tübingen University)
100 Most Endangered Sites of the World Monument Fund (WMF)
86th Faculty Research Lecture: The Discovery of Ancient Urkesh and the Question of Meaning in Archaeology - Giorgio Buccellati, Professor, Near Eastern Languages and Cultures, April 27, 1999 - UCLA webcast (utilises RealPlayer)

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