カーミシュリー

シリア北東部の都市、カーミシュリー：歴史、文化、そして現代の課題

カーミシュリーは、シリア北東部、トルコとの国境近くに位置する都市です。ハサカ県の主要都市の一つであり、イラク国境にも比較的近いため、古くから交通の要衝として栄えてきました。ジャグジャグ川が流れ、その水はユーフラテス川の支流であるハブール川に注いでいます。

多様な民族が織りなす歴史

カーミシュリーの人口は約20万人と推定され、シリア最大のキリスト教徒人口を擁する都市として知られています。クルド人を中心に、アッシリア人、アラブ人、アルメニア人など、様々な民族が共存しています。特にアッシリア人は市内において大きなコミュニティを形成しており、3万人を超える人口を誇ります。毎年12月には盛大なクリスマスパレードが開催されるなど、多様な文化が共存する街の賑わいを見せています。

この都市の成立は、第一次世界大戦後のオスマン帝国解体と深く関わっています。トルコ国境に位置するヌサイビン（古代ニシビス）と一体だった地域が、トルコとフランス委任統治領シリアの分割によって分離されました。1926年、アレッポとモースルを結ぶバグダード鉄道（タウルス鉄道）の駅が開設されたことにより、現在のカーミシュリーが発展を始めました。

初期の住民の多くは、トルコでの迫害を逃れてシリアに避難してきたアッシリア人、クルド人、アルメニア人でした。彼らは、この地で新たな生活を築き、独特の文化を形成していきました。

交通と経済：発展と変化

カーミシュリーには、アレッポとを結ぶバグダード鉄道に加え、1970年代にソ連の支援によって建設された新しい鉄道が通っています。この新しい鉄道は地中海沿岸のラタキア港から始まり、アレッポ、デリゾールを経て、ハサカ、そしてカーミシュリーへと至り、バグダード鉄道と接続しています。全長750kmに及ぶこの鉄道は、シリアの経済発展に大きく貢献しました。また、道路網に加え、国際線も発着する空港も整備されています。

カーミシュリー周辺は穀倉地帯であり、農業が主要産業です。近年では、東80kmにあるカラー・シュク地区での油田発見により、石油産業も重要な経済基盤となっています。この石油資源の発見は、地域経済に大きな変化をもたらし、同時に新たな課題も提起しています。

クルド人問題と現代のカーミシュリー

カーミシュリーはクルド人の人口も多く、クルディスタン地域の一部をなしています。イラク戦争後の国際情勢の変化は、クルド人の民族意識の高まりをもたらしました。2004年には、サッカーの試合をきっかけとしたクルド人サポーターとアラブ人サポーターの衝突が、政府による発砲事件へと発展し、多くの死傷者を出しました（カーミシュリー事件）。この事件は、シリア全土のクルド人住民の抗議活動を巻き起こす大きな契機となりました。

2012年、ロジャヴァ革命によりアサド政権の支配力が弱まり、カーミシュリーはロジャヴァ自治政府の事実上の首都として機能するようになりました。このことは、カーミシュリーの政治的・地政学的状況を大きく変え、現在もなお複雑な状況が続いています。

カーミシュリーは、多様な民族と歴史、そして現代の課題が複雑に絡み合う都市です。その発展と変化は、シリア、ひいては中東地域の未来を理解する上で重要な意味を持っています。

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