ウルシオール

ウルシオールは、ウルシ科の植物、特にウルシ属に多く含まれる化合物です。この物質は、植物の樹液中に存在し、皮膚に接触すると接触性皮膚炎（かぶれ）を引き起こすことで知られています。真島利行が構造を決定し、三山喜三郎によって命名されました。

ウルシオールの特徴

ウルシオールは、ウルシ科の植物だけでなく、カシューナッツの殻やマンゴーの皮などにも含まれています。この物質に触れると、人によっては皮膚に発疹やかゆみなどのアレルギー反応が現れます。

日本語の「漆」が語源となっており、湿った環境で樹液が酸化・重合すると粘度の高い液体になります。この特性は、伝統的な漆器の製造において重要な役割を果たしています。20世紀初頭には、ウルシオールの化学反応によって漆が固化する現象が解明されました。

ウルシオールは、摂氏200～210度で沸騰する淡黄色の粘稠な液体で、アルコールやエーテルには溶けますが、水にはほとんど溶けません。化学的には、いくつかの類似した構造を持つ化合物の混合物であり、それぞれが15〜17個の炭素原子からなるアルキル鎖で置換されたカテコールです。アルキル鎖には飽和したものと不飽和のものがあり、これらの混合比率は植物の種類によって異なります。

たとえば、アメリカ原産のポイズンオーク（Toxicodendron diversilobum）に含まれるウルシオールにはC17の側鎖を持つカテコールが多く含まれていますが、ポイズンアイビー（Toxicodendron radicans）やポイズンスーマック（Toxicodendron vernix）のウルシオールにはC15のものが多く含まれています。側鎖の飽和度が、ウルシオールによる皮膚炎の発生率に影響を与えます。飽和側鎖を持つウルシオールでは、約半数以下の人がかぶれますが、不飽和側鎖を持つものでは90%以上の人がかぶれるとされています。

ウルシオールに類似した物質

ウルシオールと類似した構造を持つ物質も存在します。例えば、以下のものがあげられます。

ラッコール (laccol)：ツタウルシの葉などに含まれます。
チチオール (thitsiol)：タイやミャンマーに生息するビルマウルシ（Gluta usitata）に多く含まれます。現地では「スィッスィー」や「ティッスィー」と呼ばれています。
マンゴール (mangol)：マンゴーに含まれる成分です。
カルドール (cardol)：こちらもマンゴーに含まれています。

これらの物質も、ウルシオールと同様に皮膚炎を引き起こす可能性があります。

その他の情報

ウルシオールによるアレルギー反応は、ハプテンと呼ばれる低分子化合物が、体内のタンパク質と結合してアレルゲンとなることで発生します。ウルシ科の植物にはウルシオールのほか、カシューナッツ、ピスタチオ、マンゴーなども含まれています。

ウルシオールへの接触による接触性皮膚炎は、かゆみや発疹を伴い、時には重症化することもあります。ウルシ科の植物に触れる際には、十分な注意が必要です。

関連項目

ウルシ科
カシューナッツ
ヌルデ
ハプテン
ピスタチオ
マンゴー
毒
接触[[皮膚炎]]

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