ツタウルシ

ツタウルシ（蔦漆）

ツタウルシ（学名: Toxicodendron orientale）は、ウルシ科ウルシ属の落葉つる性木本で、山地に自生する有毒植物です。別名としてウルシヅタとも呼ばれます。名前の由来は、ウルシの仲間でありながら、ツタのように気根を使って他の木に這い上がって成長することからきています。

分布と生育環境

ツタウルシは、日本国内では北海道から九州まで広く分布しており、山地の落葉樹林で見られます。寒冷な山地を好みますが、低地のスギ林や海岸林でも生育が確認されています。高木の幹に気根を付着させて這い上がったり、日当たりの良い倒木や岩場、コンクリートの壁面などを覆うように広がります。海外では、樺太、南千島、朝鮮半島、中国大陸にも分布しています。

特徴

形態: 落葉性のつる植物で、気根を出して他の樹木や岩に絡みつきながら成長します。樹皮は淡褐色で、縦に裂けた後に灰黒色へと変化します。若い枝には褐色の毛が密生しており、特に枝先で顕著です。葉は互生し、3出複葉です。小葉は卵状楕円形で先端が尖り、縁は全縁ですが、若い個体では鋸歯が見られることがあります。
葉: 葉柄は3 - 10cmで褐色の毛が散生しています。頂小葉は長さ5 - 15cm、幅3 - 9cm、側小葉は長さ5 - 12cm、幅3.5 - 7cmです。葉の表面は無毛ですが、裏面の側脈基部には褐色の毛があります。秋には鮮やかな赤色や黄色に紅葉し、山野を彩ります。
花: 花期は5 - 6月で、葉腋から総状花序を出し、小さな花を多数咲かせます。萼片と花弁はそれぞれ5個で、花弁は黄緑色をしています。雄花には5本の雄蕊があり、雌花には退化した雄蕊と1本の雌蕊があります。
果実: 8 - 9月に直径5 - 6mmの扁球形の核果が黄褐色に熟します。果実の表面には短い毛が散生しており、縦方向に筋が入っています。外果皮は剥がれやすく、白いロウ質の中果皮が露出します。
冬芽: 冬芽は裸芽で先端が曲がりやすく、明褐色の毛が密生しています。

有毒成分

ツタウルシの葉には、ウルシオールという漆の成分が含まれています。この成分が皮膚に触れると、炎症やかぶれを引き起こすことがあります。ウルシと同様に毒性が強く、体質によっては近くを通るだけでもかぶれることがあるため、注意が必要です。

下位分類

タイワンツタウルシ (Toxicodendron orientale subsp. hispidum)：中国に分布。

参考文献

亀田龍吉『落ち葉の呼び名事典』世界文化社、2014年。ISBN 978-4-418-14424-2。
金田初代、金田洋一郎（写真）『ひと目でわかる! おいしい「山菜・野草」の見分け方・食べ方』PHP研究所、2010年。ISBN 978-4-569-79145-6。
佐竹義輔ほか 編『日本の野生植物 木本II』平凡社、1989年。ISBN 4582535054。
鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『樹皮と冬芽：四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社、2014年。ISBN 978-4-416-61438-9。
林将之『紅葉ハンドブック』文一総合出版、2008年。ISBN 978-4-8299-0187-8。
茂木透 写真、高橋秀男,・勝山輝男 監修『樹に咲く花：離弁花 2』山と溪谷社、2000年。ISBN 4-635-07004-2。
牧野富太郎原著、大橋広好・邑田仁・岩槻邦男編『新牧野日本植物圖鑑』北隆館、2008年。ISBN 978-4-83261000-2。

関連項目

ヤマウルシ

もう一度検索