ウルシ科

ウルシ科（Anacardiaceae）

ウルシ科は、双子葉植物に属する科であり、約83属860種を含む多様なグループです。日本にはウルシ、ヌルデ、ハゼノキなどが自生し、私たちの生活に深く関わっています。また、マンゴー、ピスタチオ、カシューナッツなど、経済的に重要な植物も多く含まれています。

名前

学名「Anacardiaceae」は、カシューナッツを模式種としています。和名としては、牧野富太郎がヤマハゼの別名から「ハゼノキ科」と命名しました。

形態

ウルシ科の植物は、木本であり、低木または高木として生育します。葉、根、幹の皮層、髄などに樹脂道を持つことが多く、これらの樹脂や乳液は時に強い毒性を示します。特に髄の樹脂道は、多くの種に見られるウルシ科の特徴とされています。また、タンニン細胞もよく見られます。

道管要素は単穿孔で連結されていることが多いですが、一部では階段状穿孔も見られます。葉は落葉性または常緑性で、互生または対生し、托葉はありません。通常、奇数羽状複葉ですが、偶数羽状複葉や単葉の場合もあります。花は小さく目立たず、円錐花序を形成します。花は両性または単性で、萼片と花弁は同数で3-7個です。雄しべは離生し、花弁の数の2倍またはそれ以上あります。子房は上位で、1室または4-5室です。果実は通常、核果で、裂開しません。種皮は非常に薄く、胚乳はほとんどありません。

生態

カラスがウルシ属の種子を好んで食べることが知られています。

人間との関係

ウルシ科の植物は、人々の生活に様々な形で利用されています。

樹液・樹脂

ウルシの樹液は、塗料として古くから利用されています。ウルシの幹に傷を付けて採取された樹液は、漆として様々な工芸品に用いられます。岩手県二戸市浄法寺町は、国産漆の主要な生産地であり、浄法寺漆としてブランド化されています。また、ミャンマーではビルマウルシの樹液が漆として利用されています。ギリシャでは、カイノキ属からマスティック・ガムと呼ばれる樹脂を採取し、利用しています。

木蝋

ハゼノキなどの果実から採取される木蝋は、和蝋燭の原料として使用されます。

食用

カシューナッツやピスタチオは、種子が食用として広く利用されています。また、マンゴーをはじめとする果実も食用とされますが、傷みやすいものが多く、生産地近郊での消費が主となっています。地中海沿岸地域では、マスティックガムを香料として使った飲料が販売されています。インドでは、カシューナッツノキの果実から蒸留酒が造られています。韓国料理のサムゲタンの一種には、ウルシの樹皮を煮込んだ漆鶏湯があります。

薬用

漢方や各地の伝統医学では、薬として利用される種類も多く存在します。

木材

南米産のゴンサロアルベスは、虎縞模様が特徴で、タイガーウッドとして国際的に流通しています。また、中米原産のチェチェンも有用な木材として利用されます。一部の種は、細胞中にシリカの結晶を含んでおり、硬く、切削の際に刃物を傷めることがあります。

アレルギーの原因植物として

ウルシ科の植物は、ウルシオールやラッコールなどのカテコールを含み、接触すると皮膚炎を引き起こすことがあります。また、マンゴーやカシューナッツでも食物アレルギーの報告があります。特にカシューナッツは、特定原材料として表示が推奨されています。

分布

ウルシ科の植物は、熱帯・亜熱帯地域に多く分布し、温帯に分布する種は少数です。熱帯アメリカ、アフリカ、インドに多くの種が分布しています。カイノキ属とヌルデ属は南ヨーロッパで見られ、ヌルデ属は北アメリカに広く分布しています。サンショウモドキ属は南アメリカに広く分布しています。

分類

ウルシ科の分類は、歴史的に様々な変遷を経てきました。アントワーヌ・ローラン・ド・ジュシューが1789年に記載した「Terebintaceae」が、ウルシ科のアイデアの初出とされています。その後、ロバート・ブラウンやオーギュスタン・ピラミュ・ドゥ・カンドールらによって分類が見直され、ジョン・リンドリーが現在の「Anacardiaceae」に近い枠組みを確立しました。アドルフ・エングラーはウルシ科に5つの連を認め、アルメン・タハタジャンはこれらを2つの亜科にまとめました。分子系統解析の結果も、この分類を裏付けています。

カイノキ属は、花の構造や花粉の形態から、かつてはカイノキ科として分けられていましたが、胚珠の形態やDNAの解析から、ウルシ科の一員であることが示されています。

下位分類

ウルシ科には、多数の属が含まれています。以下に代表的な属をいくつか紹介します。

Abrahamia
Actinocheita
Allospondias
Amphipterygium
カシューナットノキ属 (Anacardium)
Androtium
Antrocaryon
アストロニウム属 (Astronium)
Attilaea
Baronia
Blepharocarya
Bonetiella
アカタネノキ属 (Bouea)
ウミソヤ属 (Buchanania)
ウミソヤモドキ属 (Campnosperma)
Campylopetalum
Cardenasiodendron
チャンチンモドキ属 (Choerospondias)
コモクラディア属 (Comocladia)
ケムリノキ属/ハグマノキ属 (Cotinus)
Cyrtocarpa
Dobinea
Dracontomelon
Drimycarpus
Euroschinus
Faguetia
Fegimanra
レンガス属 (Gluta)
Haematostaphis
Haplorhus
Harpephyllum
Heeria
Holigarna
Koordersiodendron
Lannea
Laurophyllus
Lithraea
Loxopterygium
Loxostylis
Malosma
マンゴー属 (Mangifera)
Mauria
Melanochyla
Metopium
Micronychia
Mosquitoxylum
Myracrodruon
Nothopegia
Ochoterenaea
オペルクリカリア属 (Operculicarya)
Orthopterygium
Ozoroa
Pachycormus
Parishia
Pegia
Pentaspadon
カイノキ属/ランシンボク属 (Pistacia)
Pleiogynium
Poupartia
Poupartiopsis
Protorhus
Pseudoprotorhus
Pseudosmodingium
Pseudospondias
Rhodosphaera
ヌルデ属 (Rhus)
ケブラチョ属 (Schinopsis)
コショウボク属 (Schinus)
Sclerocarya
Searsia
ドクウルシ属/タイトウウルシ属 (Semecarpus)
Smodingium
Solenocarpus
グレープマンゴー属 (Sorindeia)
アムラノキ属/アムラタマゴノキ属 (Spondias)
シビット属 (Swintonia)
Tapirira
Thyrsodium
ウルシ属 (Toxicodendron)
Trichoscypha

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