ウルフ・WR1

ウルフWR1：F1の歴史に名を刻んだ名車

1977年、F1世界選手権の戦場に新たな刺客が現れた。ウォルター・ウルフ・レーシングが開発したウルフWR1である。このマシンは、後のF1界に大きな影響を与える、数々のドラマを生み出すことになる。

誕生：ウィリアムズからの独立と新たな挑戦

ウルフWR1の誕生は、ウォルター・ウルフの決断と、数々の才能ある人物の集積によって実現した。財政難に苦しんでいたウィリアムズへの出資を経て、ウルフはチームを率いたものの、成績不振に陥る。そこで、彼は大胆な決断を下す。フランク・ウィリアムズとの袂を分かち、ロータスからピーター・ウォーをヘッドハンティングし、ウォルター・ウルフ・レーシングを設立したのだ。

この新生チームのために開発されたのが、ウルフWR1である。元ウィリアムズのハーベイ・ポスルスウェイト博士らが中心となり開発が進められたが、設計図を全てポスルスウェイト博士が描いたわけではないという。開発チーム全体の総力戦によって完成したマシンと言えるだろう。

特徴：保守的な設計とケブラーの採用

WR1は、ポスルスウェイト博士が以前在籍していたヘスケスで製作された308をベースに設計された。コスワースDFVエンジンとヒューランド製ギアボックスという、当時としては標準的な構成を採用している。革新的な要素は少なく、同時期にデビューしたロータス78と比較すると、保守的な設計と言えるだろう。しかし、当時最先端素材であったケブラーをカウルの材料に採用するなど、軽量化への工夫も凝らされていた。また、WR2以降は高速サーキット対応のためホイールベースが延長され、WR1も後に同様の改良が施された。WR1からWR9までのシャーシが存在するが、WR2、WR3、WR4はWR1とほぼ同一のマシンであった。

戦績：デビュー戦勝利と輝かしい活躍

WR1を駆り、アルゼンチンGPに参戦したウォルター・ウルフ・レーシングは、ジョディ・シェクターのドライブによってデビュー戦勝利という快挙を達成した。これはチームにとってF1世界選手権における3度目のデビュー戦勝利であった。燃料系のトラブルによるリタイアもあったものの、シーズンを通して3勝を挙げ、ドライバーズランキング2位、コンストラクターズランキング4位という素晴らしい成績を残した。

翌年にはWR5に更新されたものの、WR3とWR4はセオドールチームに渡り、イギリス国内選手権で活躍。1980年、ブランズ・ハッチで開催されたレースでは、デジレ・ウィルソンが女性ドライバーとして唯一、F1レースで勝利を掴んだ。中古車同士のレースではあったものの、WR1の活躍はF1の歴史にその名を刻むこととなった。

プラモデル化：タミヤとの繋がりと友情

WR1の高い人気は、プラモデル化にも繋がった。日本のプラモデルメーカーであるタミヤがWR1をモデル化し、発売されたのだ。この背景には、ピーター・ウォー氏とタミヤの田宮俊作会長との長年の親交があった。当時模型店を営んでいたピーター・ウォー氏は、田宮俊作氏と交流を持ち、日本グランプリのために製作された、タミヤの星と日の丸のステッカーは、二人の友情の証でもある。このステッカーは現在もタミヤのオリジナルグッズとして販売されている。

スペックと使用シャーシ

使用シャーシは、ウォルター・ウルフ・レーシングがWR1、WR2、WR3、WR4を使用。セオドールチームもWR3とWR4を使用し、レースに参加している。

記録

年間3勝、1PP(1977年)
コンストラクターズランキング4位
* ドライバーズランキング2位（ジョディ・シェクター）3勝、1PP

ウルフWR1は、その性能とドラマチックな活躍によって、F1の歴史に深く刻まれた一台である。保守的な設計の中に秘められたポテンシャルと、それを最大限に引き出したドライバー、そしてチームの努力の結晶と言えるだろう。

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