ウンターリンデン美術館

フランス北東部に位置する風光明媚な街、コルマール。この美しい街の中心部にあるウンターリンデン美術館（Musée Unterlinden）は、コルマールで最も大きく、そして最もよく知られた文化施設です。

歴史と建築

この美術館の建物は、もともと13世紀、具体的には1230年に建てられたカトリックの修道院、ウンターリンデン僧院をその起源としています。中世のゴシック様式が特徴的なこの修道院は、フランスの重要な歴史的建造物として登録有形文化財に指定されています。フランス革命期に修道院としての機能は停止されましたが、その後、建物を文化のために活用しようという動きが起こります。1849年に美術館として利用されることが決定し、ついに1853年、博物館として一般に開館しました。

開館後もコレクションは増え続け、時が経つにつれて手狭になっていきました。そのため、21世紀に入ると大規模な拡張計画が進められることとなります。この重要なプロジェクトを手掛けたのは、世界的に著名な建築家ユニットであるヘルツォーク＆ド・ムーロンでした。彼らの設計による拡張工事は2016年1月に完成し、当時のフランス大統領フランソワ・オランドによって落成式が行われました。

拡張によって、歴史的な旧修道院の建物に加え、かつて公共プールとして使われていた1906年建築の建物や、それらを結ぶ新しい地下通路などが整備されました。これにより、美術館の展示スペースや機能が大幅に拡充され、歴史的建造物の魅力と現代的な空間が見事に融合した、規模の大きな美術館へと生まれ変わりました。

収蔵品

ウンターリンデン美術館の収蔵品は非常に多岐にわたります。考古学のコレクションから、アルザス地方に伝わる素朴で温かみのある民芸品、精巧な美術工芸品、さらには歴史的な武器や楽器、そしてコルマール市の歴史に関する資料まで、様々な分野の展示を楽しむことができます。

しかし、この美術館を特に世界的に有名にしているのは、その質の高い美術コレクションにあります。

中世後期からルネサンス初期のドイツ美術: この時代のヨーロッパ美術において極めて重要な作品群を所蔵しています。ドイツ圏におけるルネサンスの先駆者たちの傑作が集められており、マルティン・ションガウアー、マティアス・グリューネヴァルト、ハンス・ホルバイン（父）、そしてルーカス・クラナッハといった、美術史に名を刻む巨匠たちの貴重な作品を鑑賞することができます。
近現代美術: 20世紀以降の美術作品においても、大都市の主要美術館に匹敵するほどの充実したコレクションを誇っています。印象派、ポスト印象派、キュビスム、シュルレアリスムなど、多様なスタイルの作品が揃っており、クロード・モネ、ピエール＝オーギュスト・ルノワール、ピエール・ボナール、ジョルジュ・ルオー、パブロ・ピカソ、ロベール・ドローネー、シャイム・スーティン、シュザンヌ・ヴァラドン、フェルナン・レジェ、ジャン・デュビュッフェ、オットー・ディクス、ヴィクトル・ブローネル、ヴィフレド・ラム、ジャン・フォートリエ、ニコラ・ド・スタール、ジャン・エリオンなど、枚挙にいとまがないほどの著名な芸術家たちの作品が展示されています。

そして、ウンターリンデン美術館の全収蔵品の中で、最も有名で、多くの人々がこの美術館を訪れる最大の目的となっているのが、マティアス・グリューネヴァルトによる「イーゼンハイム祭壇画」です。この壮大で表現力豊かな祭壇画は、中世末期ドイツ美術の最高傑作の一つとされており、その荘厳な存在感は見る者を圧倒します。

歴史ある旧修道院の静謐な空間の中で、時代を超えた多様な芸術作品に出会えるウンターリンデン美術館は、コルマールを訪れる際にぜひ立ち寄りたい、魅力あふれる場所と言えるでしょう。

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