ウーヴェ・ボル

ウーヴェ・ボル（Uwe Boll）は、1965年 6月22日にドイツのヴェルメルスキルヒェンで生まれた映画監督、プロデューサー、そして脚本家です。現在は閉業していますが、かつてカナダでレストラン経営も行っていました。

キャリアの軌跡

ボルは幼い頃、マーロン・ブランド主演の映画『戦艦バウンティ』に感銘を受け、10歳という若さで映画製作の世界に足を踏み入れることを決意したと言われています。その後、彼は自主映画の製作を続け、ケルン大学で学び、博士号を取得。1994年にはジーゲン大学で博士論文を発表しました。バンクーバーの撮影スタジオで雑用係として経験を積んだ後、2001年の『シアトル猟奇殺人捜査』でハリウッドでのキャリアをスタートさせました。彼は非常に多作なことで知られ、年間3本から4本という驚異的なペースで作品を発表しました。これらの作品の多くは、彼が移住し活動拠点としていたカナダのバンクーバーで撮影されました。過去には、自身が映画化したゲームシリーズ『ポスタル』の最新作『Postal3』にキャラクターとして登場する計画もありました。

2015年には、バンクーバーでドイツ料理レストラン「Bauhaus Restaurant」を開業しています。2016年には、自身の監督作である「Rampage」シリーズの最終作『ボーダーランド』を最後に、映画監督業から引退し、今後はレストラン経営と映画流通業に専念すると発表しました。しかし、その後撤回し、2020年には再び映画製作の現場に戻ることを明らかにしました。

評価と論争

2000年代中期にかけて、ボルは多くのコンピュータゲームを原作とした映画を製作しました。しかし、これらの作品に対する批評家や一般の観客からの評価は概して非常に厳しく、散々なものとなりました。その結果、彼は「最低映画制作者」というレッテルを貼られることになります。しかし、彼の作品には、レイ・リオッタやクリスチャン・スレイターといった人気俳優から、ベン・キングズレーやユルゲン・プロホノフのような大物俳優まで、名だたる顔ぶれが出演しており、その資金力やキャスティング能力から「資産家の息子ではないか」「ハリウッドに強力なコネがあるのではないか」といった憶測を呼ぶほどでした。彼はゴールデンラズベリー賞において数多くのノミネートを果たし、2008年には最悪監督賞と最悪功績賞を同時に受賞しています。

ゲームの熱心なファンの中には、彼が自身の好きなゲームの映画化を手がけることを強く嫌がる者も多く、彼にこれ以上ゲーム原作の映画を撮らせないために、インターネット上で署名活動が行われたほどです。これに対しボルは、自身の監督作『POSTAL』公開までに100万票の署名が集まれば監督業から足を洗うと応じ、ついには製菓会社が「100万票が集まれば署名者全員にガムを配布する」と発表するという、奇妙な騒動に発展しました。また、ゲーム開発者からも敬遠されることがあり、『World of Warcraft』の映画化を企画した際には、開発元であるブリザード・エンターテイメントから「あなたにだけは絶対に映画化の権利を売りません」と頑なに拒否されました。このような経緯からか、近年はゲーム原作の映画を手がけることが少なくなっています。

しかし、彼の作品や活動すべてが否定的に見られているわけではありません。日本の雑誌『映画秘宝』では、俳優のクリスチャン・スレイターが彼の撮影現場について「常にカメラを2台回して無駄がなく、現場では笑いが絶えなかった」と肯定的なコメントを寄せたことが紹介されました。また、ゲーム原作以外の作品の中には、そのリアルで陰惨な暴力描写が一部で評価されることもあります。

ボルはまた、その挑発的でパフォーマンス志向の姿勢でも知られています。自身の作品を批判した映画評論家に対してボクシングでの決着を挑んだり、「映画界を追放された」と偽ってスーダン（実際は南アフリカのロケセット）で生活する様子を収めた動画を公開したりするなど、話題作りに事欠きませんでした。

作品評価が極めて低いにも関わらず、彼が継続的に映画の製作資金を調達できた背景には、ドイツの国内映画産業奨励を目指した法律が存在します。この法律では、映画製作への投資資金は全額が課税控除の対象となり、課税されるのは利益のみでした。このため、投資家は最初から必ずしも興行的な成功や利益を求めず、税金対策として投資を行うケースがありました。例えば、『POSTAL』のように1800万ドルもの製作費を投じながら、全米でわずか12館での公開に留まるという事態も、投資家にとっては問題とならなかったのです。一方で、この同じ法律を利用した多くの映画が、税控除の条件を満たした段階で撮影を中止してしまうことがあるのに対し、ボルは少なくとも作品を完成させることで、法律の本来の目的をある程度満たしているという指摘も存在します。

彼のフィルモグラフィは膨大で、監督作には初期の『German Fried Movie』や『Amoklauf』から、ゲーム原作の『ハウス・オブ・ザ・デッド』『アローン・イン・ザ・ダーク』『ブラッドレイン』、アクション大作風の『デス・リベンジ』シリーズ、社会派的な『ダルフール・ウォー熱砂の虐殺』、近年復帰後の『Hanau』など、多岐にわたります。プロデュース作品も多数手がけています。

ウーヴェ・ボルは、その極端なまでの多作ぶり、物議を醸す作品群、そして型破りな言動で、世界の映画界において異彩を放ち続けています。

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