グアノ

グアノとは、海鳥、コウモリ、アザラシなどの動物の糞が、長い年月をかけて堆積し、化石化したものです。この化石化した糞は、肥料の重要な資源として利用され、特に窒素やリン酸を豊富に含んでいるため、農業において貴重な存在でした。

グアノの種類

グアノは、その生成環境によって主に2つの種類に分けられます。

窒素質グアノ: これは、降雨量が少なく乾燥した地域で形成されます。乾燥した環境では、糞に含まれる窒素成分が流出しにくいため、窒素を多く含んだグアノが生成されます。
燐酸質グアノ: こちらは、熱帯や亜[[熱帯]]など、比較的降雨量が多い地域で形成されます。雨によって窒素成分が洗い流される一方で、リン酸成分が濃縮されるため、リン酸を多く含んだグアノとなります。

これらのグアノは、近代化学工業において化学肥料を製造する上で欠かせないものでした。特に、リン酸質グアノはリン鉱石が発見されるまで、主要なリン資源として世界中で利用されました。

歴史

グアノは、かつては非常に価値のある資源であったため、その採掘権をめぐって戦争が起こったこともあります。特に有名なのが、19世紀に南米で起きた「グアノ戦争」や、チリとペルー・ボリビアが争った「太平洋戦争」です。これらの戦争は、グアノの資源を巡る国家間の対立が激化した例と言えるでしょう。

ペルーは、領有する島々に大量のグアノ資源があったことから、それをヨーロッパに輸出することで莫大な利益を得ました。しかし、その利益は一時的なもので、資源が枯渇すると経済的な破綻を招いてしまいました。その後、窒素肥料の原料はチリ硝石や、20世紀初頭にドイツで開発された化学的窒素固定へと移行していきます。

また、燐酸質グアノは南洋の島々に多く存在していましたが、資源としては大量に存在するものではなかったため、ナウル共和国などの採掘地では、すでに枯渇してしまっています。

バット・グアノ

海鳥由来のグアノとは別に、洞窟内に生息するコウモリの糞や体毛、洞窟内の生物の死骸などが堆積して化石化したものを「バット・グアノ」と呼びます。バット・グアノは量が少ないため、主に観賞植物や家庭菜園用の肥料として利用されています。

主な産出地

グアノが産出された、または産出されている主な地域は以下の通りです。

ゴメ島
鳥島
南鳥島
石川県能登島及び能登半島の一部: 明治から大正期、及び第二次世界大戦中に大規模な採掘が行われました。能登島半ノ浦地区では、海底にある鉱床を露天掘りで採掘し、その堰堤は漁港の防波堤に転用されました。
与論島
波照間島
竹島
草垣群島
久多島
北大東島: ボーキサイトを含有していたため、アルミニウム資源としても注目されました。
沖大東島（ラサ島）
南沙諸島
チンチャ諸島 (ペルー)
ナウル
バナバ島
クリッパートン島
クリスマス島

関連事項

チリ硝石: 窒素肥料の原料として、グアノの後に利用されました。
リン鉱石: 燐酸質グアノの代替となるリン資源です。
恒藤規隆: 明治期の農学者で、日本国内のリン鉱床の発見に尽力しました。ラサ工業の創業者でもあります。
グアノ島法: アメリカ合衆国が制定した、無人島にグアノを発見した場合に領有を認める法律です。
グアニン: グアノから発見された物質で、名称の由来となっています。

グアノは、かつては世界経済を左右するほどの重要な資源でしたが、その枯渇と、より効率的な化学肥料の登場によって、その重要性は薄れてきました。しかし、自然由来の肥料として、現在でも一定の需要があります。

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