エゴノキ

エゴノキ（Styrax japonica）とは

エゴノキは、日本をはじめとする東アジアに広く分布するエゴノキ科の落葉小高木です。その名前は、果実を口に含んだ際に感じるえぐみ（刺激）に由来します。別名としてチシャノキ、ロクロギなどとも呼ばれ、歌舞伎の演目にも登場する身近な樹木です。現代中国語では「野茉莉」と呼ばれています。

分布と生育環境

エゴノキは、日本、朝鮮半島、中国、フィリピン北部など、東アジア地域に広く分布しています。日本では北海道から沖縄まで見られ、主に丘陵地や山地の雑木林に自生しています。また、庭木としても植栽されることがあります。

特徴

樹木としての特徴

高さ：7～15メートル程度まで成長する落葉広葉樹です。
樹皮：暗紫褐色から暗灰褐色で、滑らかで細かい質感をしています。老木になると浅い裂け目が現れます。
枝：ジグザグ状に伸び、一年枝は細く、無毛または星状毛が残ります。
葉：互生し、両端が尖った長楕円形で、長さは4.5～8センチ[[メートル]]です。若芽は褐色の星状毛に覆われています。

花の特徴

開花時期：5～6月頃。
花の付き方：短い側枝の先に、1～6個の白い花が房状に下向きに咲きます。芳香があります。
花の形状：直径約25ミリ[[メートル]]で、花冠は先端が深く5つに裂けていますが、大きく開かず、つぼみのような形で咲きます。
雄蕊：10本あります。
品種：淡紅色の花をつけるものもあります。

実の特徴

結実時期：10月。
果実：卵球形で、長さ10～13ミリ[[メートル]]、灰白色をしています。中には大きな種子が1つ入っています。
成熟：果皮が不規則に破れて種子が露出します。冬には果皮が取れて種子だけが残った状態をよく見かけます。
毒性：果皮には有毒なエゴサポニンが多く含まれています。この物質は胃や喉の粘膜に炎症を起こし、溶血作用もあります。

冬芽の特徴

互生し、裸芽で褐色の毛に覆われています。
副芽が縦に1～2個付きます。
葉痕は半円形で、維管束痕が1個あります。

利用

エゴノキは、その美しい姿から庭木として利用されるほか、緻密で粘り気のある材は、将棋の駒や和傘のロクロなどの材料として使われます。ロクロギという別名も、この利用に由来します。また、蜜源植物としても利用されることがあります。

園芸品種としては、桃色の花を咲かせる「ピンクチャイム」や枝垂れる「シダレエゴノキ」などがあります。盆栽としても親しまれており、手のひらサイズのミニ盆栽も存在します。

昔は若い果実を石鹸のように洗浄剤として利用したり、サポニンの魚毒性を利用して魚を捕獲した地域もあったようです。ただし、魚毒性については、他の植物との比較から、漁に使えるほど強力ではないという見解もあります。

動物との関係

エゴノキは、様々な動物と関わりを持っています。

エゴヒゲナガゾウムシ: この甲虫は果実に穴を開けて産卵し、幼虫が種子の中を食べて成長します。落下した種子内で休眠中の成熟幼虫は「ちしゃの虫」と呼ばれ、川釣りの餌として利用されています。
エゴノネコアシアブラムシ: このアブラムシは、イネ科のアシボソを一次寄主とし、春になるとエゴノキに移動してきて新芽に虫こぶ（エゴノネコアシ）を形成します。
* 子供たちの遊び: エゴノキの花を「セッケン花」「シャボン花」などと呼び、揉んで泡立てて遊ぶことがあります。この遊び自体に危険はありませんが、花を口に入れると有害なので注意が必要です。また、泡立てた手をしっかり洗わずに食べ物を触ると、エゴサポニンを摂取してしまう危険性があります。

まとめ

エゴノキは、その美しい花や実、多様な利用法、そして独特な生態系を持つ魅力的な樹木です。庭木として楽しむだけでなく、その生態系や歴史、文化的な背景にも目を向けることで、より深くエゴノキを理解することができるでしょう。

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