エステルハージ

エステルハージ家：ハンガリーを代表する貴族の歴史と文化

エステルハージ家は、中世から続くハンガリーの名門貴族であり、数々の分家が存在します。17世紀からオーストリア＝ハンガリー帝国末期に至るまで、ハンガリー王国において最大の地主であり、事業家としても名を馳せました。

一族の興隆

元々はハンガリー王国北部のガランタ（現在のスロバキア南西部）のジェントリにすぎませんでしたが、エステルハージ・ニコラウス伯爵（1583–1645）とその息子エステルハージ・パール侯爵（1635–1713）の時代に大きく台頭しました。1626年にニコラウスが伯爵位を授けられ、1712年にはエステルハージ本家が侯爵位を得ています。エステルハージ家の成功は、着実な土地の蓄積と、カトリック教会およびハプスブルク家への忠誠に支えられていました。

ハンガリーは長きにわたりオーストリアの支配からの解放を求め、時には反乱や革命を起こしましたが、エステルハージ家は一貫してハプスブルク家に忠誠を誓い、数々の危機において貢献を果たしました。1683年のオスマン帝国によるウィーン包囲や、1809年のナポレオンによるウィーン占領などがその例です。

富の源泉

エステルハージ家は、以下の3つの方法で財産を築き上げました。

対抗宗教改革におけるプロテスタントからの土地の再分配
オスマン帝国に征服された土地（オスマン帝国領ハンガリー）の再分配
巧みな結婚による相続

その領地は現在のオーストリア、スロバキア、ハンガリーにまで広がり、ハプスブルク帝国最大の地主となり、時にはオーストリア皇帝の収入を上回るほどの財力を持つに至りました。

ハイドンとの関係

交響曲の父と呼ばれる作曲家フランツ・ヨーゼフ・ハイドンは、エステルハージ家に楽長として仕えました。1761年、ハイドンはエステルハージ・ミクローシュ・ヨージェフに雇われ、その死後も後継者のエステルハージ・ミクローシュのもとで長く活躍しました。ミクローシュの息子エステルハージ・アンタルは音楽に関心が薄く、ハイドンは名ばかりの楽長としてイギリスで過ごすことが多くなりましたが、アンタルの死後、次のエステルハージ・ミクローシュの時代に再び楽長として仕え、主にミクローシュの妻マリア・ヨーゼファ・ヘルメンギルデの聖名祝日のためのミサ曲を作曲しました。ハイドンは1809年に亡くなるまで、この職務を続けました。

主な人物

エステルハージ・ニコラウス (1583年 - 1645年)：伯爵。カトリックに改宗し、莫大な富を得てハンガリー王国の宮中伯に選任されました。
エステルハージ・パール (1635年 - 1713年)：侯爵。詩人、チェンバロ奏者、作曲家としても才能を発揮しました。オスマン帝国との戦いで功績を挙げ、侯爵位を授けられました。
エステルハージ・ミクローシュ・ヨージェフ (1714年 - 1790年)：ハイドンの重要なパトロンであり、エステルハージ宮殿を建設しました。
エステルハージ・ミクローシュ (1765年 - 1833年)：ナポレオンからハンガリー国王の地位を打診されましたが、これを拒否し、ハプスブルク家への忠誠を貫きました。
エステルハージ・ペーテル (1950年 - 2016年)：現代ハンガリーを代表する作家。

エステルハージ家ゆかりの地

ガランタ：1402年からエステルハージ家の私有地となり、現在はスロバキアの一都市となっています。
アイゼンシュタット：エステルハージ宮殿が所在し、音楽の中心地として栄えました。
エステルハージ宮殿 (アイゼンシュタット)：壮麗なバロック様式の宮殿で、ハイドンが活躍した場所としても知られています。
エステルハージ宮殿 (フェルテード)：「ハンガリーのベルサイユ」とも呼ばれる、広大なロココ建築の建物です。

エステルハージ家は、ハンガリーの歴史と文化に深く根ざした貴族であり、その遺産は今もなお、様々な形で息づいています。

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