エストラム

エスキシェヒル市の路面電車システム「エストラム(EsTram)」

トルコ共和国エスキシェヒル市は、急増する交通渋滞と大気汚染、そして市内各所、特に大学キャンパスへのアクセス向上という課題を抱えていました。これらの問題への対策として、2002年に市内中心部の再開発と併せ、路面電車システムの導入が決定されました。こうして誕生したのが、エストラム(EsTram)です。

エストラムの建設と歴史

エストラム計画では、ボンバルディア社とヤピ・メルケジ社のコンソーシアムが車両導入を含む建設請負を担当。スウェーデンの輸出信用と欧州投資銀行からの資金援助も得て、2004年12月24日、15kmに及ぶ2号線と3号線が開通しました。当初から、バスやミニバス路線の再編も同時に行われ、路面電車を軸とした公共交通網の構築を目指しました。

2011年までの7年間で、エストラムの利用客数は1億8450万人を突破、週間平均利用客数は9万7820人に達しました。これは、エスキシェヒル市における重要な交通機関としての地位を確立しただけでなく、トルコ国内でも最も成功した鉄道輸送システムの一つとして評価されるに至りました。この成功は、2004年の国際公共交通連合の鉄道システム賞受賞や、2007年のISO 9001:2000認証取得にも繋がっています。

その後も、エスキシェヒルの交通需要増に対応するため、路線網の延伸が継続されました。2014年4月、同年8月（2路線）、そして2019年3月と、計4区間の路線が開通。2020年時点では、総延長45kmに及ぶ大規模な路面電車網を擁するようになりました。

エストラムの運行と運賃システム

2020年現在、エストラムは7系統を運行しています。車両は片運転台式であるため、各系統の終点駅は折り返し用ループ線、もしくは環状線区間のいずれかとなっています。

運賃システムには、1回乗車用のエスビレット(Esbilet)と、非接触式ICカードのエスカルトの2種類があります。エスビレットは3.5トルコリラ(TL)、エスカルトはデポジットが必要ですが、2.5TLと割安になっています。これらの乗車券は、エスキシェヒル市内のバスやミニバスでも利用可能です。

エストラムで使用される車両

エストラムには、主に2種類の車両が導入されています。

フレキシティ・アウトルック

ボンバルディア・トランスポーテーション社製の路面電車車両です。片運転台式の5車体連接車で、小径車輪を用いた車軸付きボギー台車により、低床構造、騒音・振動抑制、メンテナンス容易性の全てを実現しています。設計最高速度は70km/h。開業時は18両が導入され、その後、需要増加に伴い2006年に5両、2012年に10両が増備されました。増備車には、LED式案内表示装置や空調システムなどの改良が施されています。ボンバルディア社は車両製造に加え、保守、部品供給、乗務員訓練なども担当しています。

フォアシティ・クラシック

チェコのシュコダ・トランスポーテーション社製の超低床電車です。エストラムに導入されたのは、片運転台式の5車体連接車。2016年9月に14両の契約が締結され、2018年9月17日から営業運転を開始しました。この車両は、架線のない区間での運用に対応するため、大容量の充電池を搭載しているのが特徴です。

まとめ

エストラムは、単なる交通手段を超え、エスキシェヒル市の発展に大きく貢献する、成功した公共交通システムです。その歴史、技術、そして市民生活への影響は、他の都市の公共交通計画にとっても貴重な事例となっています。今後の更なる発展も期待されます。

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