エスビー食品陸上競技部員交通死亡事故

エスビー食品陸上競技部員交通死亡事故の概要

1990年8月23日午後1時頃、北海道常呂郡常呂町（現・北見市）の国道238号線で、エスビー食品陸上競技部の合宿を終え、女満別空港へ移動中のワゴン車が痛ましい交通事故に巻き込まれました。ワゴン車は対向車線にはみ出し、トラックと正面衝突。その衝撃で道路下に転落し、大破しました。この事故により、ワゴン車に乗っていた部員の金井豊と谷口伴之、そしてコーチとマネージャーの計4名と、トラックを運転していた1名の計5名が尊い命を失いました。また、ワゴン車を運転していた大学生を含む2名が重傷を負いました。

事故当時、現場は雨で路面が濡れており、ハンドル操作を誤ったことが事故の原因とされています。特にワゴン車を運転していた大学生は、事故のわずか3ヶ月前に運転免許を取得したばかりでした。

エスビー食品陸上競技部の監督である瀬古利彦氏は、この時、合宿先の宿舎に滞在していたため、事故に遭うことはありませんでした。この年の9月には、1990年アジア競技大会（中国・北京）が開催予定で、金井選手は5000mと10000m、谷口選手はマラソンの日本代表として、メダル獲得が期待されていました。そのため、この事故は日本陸上界にとっても大きな損失となりました。

事故原因の検証

当初、事故原因はワゴン車を運転していた大学生の居眠り運転とされましたが、出発からわずか数分後に発生したことから、この可能性は低いと見られました。その後の調査で、ワゴン車のタイヤが著しく摩耗していたこと、現場の道路がスパイクタイヤの使用により路面が削られやすく、雨天時には水が溜まりやすい状態であったこと、そして事故当時、雨で路面が滑りやすい状態であったことなど、複数の要因が重なり合った複合的な事故であったと考えられています。また、運転経験の浅い大学生に運転を任せたことへの疑問も残りました。

事故後の対応と影響

事故からちょうど1年後の1991年8月23日、事故現場近くには慰霊碑が建立され、遺族や関係者が出席して除幕式が執り行われました。

事故後もエスビー食品陸上競技部は常呂町での合宿を継続していますが、合宿先の自治体職員が移動時の運転を担当するようになりました。

監督の瀬古氏は、監督室に亡くなった4人の遺影を飾り、事故から14年後の2004年には、エスビー食品所属の国近友昭選手がアテネ五輪男子マラソンに出場した際、4人の遺族をアテネ五輪の競技観戦に招待しました。この行動は、事故で亡くなった選手たちの無念を晴らし、彼らの魂を慰めるためのものでした。

この事故は、陸上界だけでなく社会全体に大きな衝撃を与え、安全運転の重要性を改めて認識させる出来事となりました。

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