エス・ピー・エス

株式会社エス・ピー・エス（SPS Co.,Ltd.）は、かつて福島県福島市に本社を置いていた日本のソフトウェア開発企業です。主に家庭用ゲームソフトの企画、開発、移植、販売、そしてオンラインゲームサーバーの運用などを事業の柱としていました。

その源流は、創業者の今野智久氏が経営する今野板金工業所の一部署に遡ります。雑誌に投稿したプログラムがきっかけとなり、シャープ株式会社からアプリケーション作成の依頼を受けるようになったことから、ソフトウェア開発への道が開かれました。「マイコンハウスSPS」という名称を使用していた時期もあります。社名は、資本関係はなかったものの、多くの業務を受注したシャープへの敬意を込めて、「シャープ・プログラム・サービス」を由来として名付けられたとされています。キャリーラボやマイクロキャビンといった同時代のソフトウェアハウスとも連携を深め、互いの製品流通などで協力関係を築いていました。

日本のパーソナルコンピュータ黎明期から積極的にソフトウェアをリリースし、その技術力は高く評価されました。特にシューティングゲーム『ぐるっぺ』では、PC本体のビープ音だけで時分割による三重和音を再現するという画期的な技術を盛り込みました。また、フロッピーディスク版では、単一のパッケージにPC-8800シリーズ、MZ-2000/2200、X1といった複数の機種に対応するプログラムを収める、といった形でリリースされ、当時のユーザーに利便性を提供しました。同社の代表作として広く知られるのは将棋ゲームの『棋太平』シリーズで、このタイトルは様々なプラットフォームへと移植が行われました。

当初は自社オリジナルのタイトル開発が中心でしたが、1980年代後半からはアーケードゲームの家庭用機への移植にも力を入れ始めます。シャープ製パーソナルコンピュータX68000の初代モデルに同梱されたコナミのシューティングゲーム『グラディウス』の移植は、その完成度の高さを示す発言があったことでも知られています。SPSはその後、シャープが販売元となった各社のゲーム移植作品に加え、カプコンやコナミが販売を手掛けた一部の移植作品など、X68000への移植を数多く手掛けました。また、自社ブランドにおいても他社作品の移植を積極的に行いました。これらの移植作品の出来栄えについては、タイトルによって評価が分かれる場合もあったものの、中にはオリジナルのアーケード版ではなく、SPSが移植したバージョンを参考に制作されたと思われる作品も存在すると言われます。

ゲーム開発以外では、マイクロソフトのMS-DOSのシステム部分がPC本体にバンドルされなくなった後、その代替となるシステムとしてPC-9800シリーズ用のアプリケーションで広く用いられたOS「MEG-DOS」の開発企業としても知られています。

2005年12月1日には、ネットビレッジ株式会社との業務提携を発表し、実質的に開発業務は同社グループのNVソフトへと引き継がれる形となりました。その後、2010年9月5日にはウェブサイトが大幅に刷新され、2007年からの新体制への移行に触れつつ、事業の中心が主にWebサーバーの運用・運営などへと移ったことが示されました。

2011年3月11日に発生した東日本大震災は、同社の事業にも影響を与えました。幸いにも社屋や機材は無事だったものの、所在地であった福島市で電話やインターネットの通信回線が途絶し、外部から運営中のサーバーへ接続できなくなる事態に見舞われました。当時あった「首都移転構想」といった東北の安全神話を前提とした計画は保留となり、首都圏での災害に備えデータを地方に移管して安全を確保するという事業展開の見直しを迫られました。

2020年4月には、代表者であった今野智久氏が病に倒れたことを受け、事業を縮小し、一部のサーバー関連業務のみを継続する体制となりました。しかし、2021年4月には、代表者の闘病生活が続き、事業の継続が困難と判断されます。同年6月10日、福島地方裁判所から破産手続きの開始決定を受け、事業を終えることとなりました。そして同年10月13日には、創業者であり、長年にわたり代表取締役社長を務めた今野智久氏が世を去りました。

同社が所有していた著作権については、2021年中に株式会社エムツーへと引き継がれています。

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