エセン・テムル

エセン・テムル: モンゴル帝国の雲南王

エセン・テムル（Esen Temür）は、モンゴル帝国の歴史における重要な人物であり、彼は第5代皇帝クビライ・カアンの庶子フゲチの息子です。彼の人生と業績は、当時の複雑な政治状況と密接に関連しています。彼の名前は、漢文史料『元史』やペルシア語史料『集史』で異なる形で記録されています。

エセン・テムルの家系と初期の経歴

エセン・テムルの父、フゲチは雲南王として雲南地域の統治に携わっていましたが、彼の急成長は敵対勢力によって邪魔され、毒殺されてしまいます。これを受けて、クビライはサイイド・アジャッルを派遣し、雲南行省を新たに設立しました。このため、エセン・テムルはサイイド・アジャッルの存命中に雲南王に封じられることはありませんでした。

至元16年（1279年）にアジャッルが亡くなると、徐々にエセン・テムルの雲南王襲封が認められるようになります。彼の雲南王即位の背景には、当時大元ウルスが叛乱に直面していたことや、政治的な力のバランスが影響したと考えられています。

雲南王としての活動

エセン・テムルが雲南王に封じられてから、彼はビルマ王朝への侵攻を試みます。至元24年（1287年）には、彼の軍がビルマの首都パガンを攻略し、北半分を征服するという功績を挙げます。この成功により、彼は旧パガン朝領に緬中行省を設立し、徐々に権限を強化していきます。

しかし、1290年には新たに雲南に派遣されたカマラによってエセン・テムルの役割に変化が訪れます。カマラが雲南に至ると、エセン・テムルの権限は縮小したとされていますが、具体的な関係ははっきりしません。

後期の政治的動向

至大元年（1308年）、新皇帝クルク・カアンが即位することにより、エセン・テムルは再び最高ランクの「一字王号」を賜りますが、彼の活動に関する記録は少なく、彼の運命は不透明なままとなります。後の内乱では、エセン・テムルは上都派に加わり、軍の指揮を取りますが、最終的にはその勢力は衰退し、1332年に彼は亡くなります。

彼の死後、雲南の地域はエセン・テムルの家系ではなく、別の家系へと統治が移っていくため、彼の活動が雲南に与えた影響は大きかったと考えられています。

家族と継承

エセン・テムルの息子については、史料によりばらつきがあり、詳細は不明ですが、彼には幾人かの子がいることが記されています。例えば、『南村輟耕録』などでは、彼の子として脱歓不花太子や脱魯太子が挙げられています。これらの家族の関連性に関しては今後の研究が期待されます。

エセン・テムルは、モンゴル帝国の時代において、戦国の中での重要な役割を果たしました。彼の政治的、軍事的な活動は、雲南の歴史だけでなく、モンゴルの歴史全体に影響を与えました。

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