エゾヤチネズミ

エゾヤチネズミについて

エゾヤチネズミ（学名: Craseomys rufocanus bedfordiae）は、齧歯目に属するタイリクヤチネズミの亜種で、主に北海道及びその周辺の諸島に生息しています。この小型の動物は、特に草原やハイマツ林などの密な草本層や落葉層が存在する環境を好む傾向が見られます。

分布

エゾヤチネズミは北海道本島に広く分布しており、利尻島、礼文島、大黒島、天売島、焼尻島などもその範囲に含まれます。母種であるタイリクヤチネズミは、更に北欧、シベリア、サハリン、中国北東部、そして朝鮮半島北部にまで広がっています。この多様な生息地が、エゾヤチネズミの生活様式に大きな影響を与えています。

形態

エゾヤチネズミは体長が108mmから140mm、尾の長さが39mmから56mm、後足の長さが19mmから20.6mm程度です。体重は27gから50gの範囲で変動します。背面は暗褐色から暗赤褐色で、腹面は白色から黄灰色をしています。このような体色は、生息環境での保護色として機能しています。乳頭式は2+0+2の合計8個となっています。

分類

エゾヤチネズミには、利尻島や礼文島、大黒島に分布する個体がやや大型であることから、その一部は別種のシコタンヤチネズミ（Clethrionomys sikotanensis）と見なされていました。最近の研究では、これらは同じ種に分類されていることが確認されています。また、昔はClethrionomys属に分類されていましたが、今ではMyodes属に変更され、その後2020年に発行された「Illustrated Checklist of the Mammals of the World」でCraseomys属とされています。

生態

このネズミは主に草食性で、食物繊維を豊富に含む植物を主食にしています。秋から春にかけては樹皮や種子、イネ科の植物を好み、夏になると多様な植物を食べるようになります。エゾヤチネズミの繁殖期は北海道の地域によって異なり、中部や南部では春と秋、道北や道東、山岳地帯では主に夏に繁殖します。妊娠期間は約18から19日で、平均して1回の出産で1から11頭の子どもを産みます。飼育下では738日という比較的長い寿命を持つことが確認されています。

天敵には、キツネやフクロウ類、ミンクなどが存在し、これらに対する防衛策も進化しています。

人とのかかわり

エゾヤチネズミは、時には爆発的に繁殖し、カラマツやトドマツの樹皮を食い荒らすことで農業や林業に対する害虫として恐れられることがあります。1950年代からは、この問題に対処するために爆発的繁殖の予測や殺鼠剤の散布が行われてきました。特に北海道では、エゾシカとともに農林業における重要な害獣の一つとされています。また、エゾヤチネズミはエキノコックスという寄生虫の中間宿主でもあり、そのため感染症予防の観点からも注意が必要です。旭川市の旭山動物園では、1985年にエゾヤチネズミの人工繁殖に成功した実績があります。

参考文献

• - 日高敏隆監修、川道武男編、「日本動物大百科1 哺乳類I」、平凡社、2002年初版第3刷、ISBN 978-4-582-54551-7
• - 阿部永監修、「日本の哺乳類」、東海大学出版会、2002年第1版第4刷、ISBN 978-4-486-01290-0

このように、エゾヤチネズミは北海道の生態系において重要な役割を果たす存在でありつつ、同時に人間社会とも密接に関わりを持っています。その動向を注視し、理解を深めていくことが求められています。

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