エティエンヌ・ド・ラ・ボエシ

エティエンヌ・ド・ラ・ボエシ：自発的隷従論を唱えた人文主義者

エティエンヌ・ド・ラ・ボエシ（Étienne de La Boétie, 1530年11月1日 - 1563年8月18日）は、16世紀フランスの裁判官であり、人文主義者です。彼は、圧政と隷従の関係を考察した『自発的隷従論』の著者として知られています。

生涯

ラ・ボエシは、フランス南西部のサルラ＝ラ＝カネダで、法官貴族の家系に生まれました。幼くして両親を亡くし、叔父に養育され、父と同じく法官の道を歩みます。オルレアン大学で法学や人文学を学び、その卒業論文として『自発的隷従論』を執筆しました。

1554年にはボルドー高等法院の評定官に就任し、法官として活動する傍ら、文筆活動も行いました。同僚であったミシェル・ド・モンテーニュとは親交が深く、互いに思想的な影響を与え合いました。

1563年、ラ・ボエシはペストと思われる病で32歳という若さで亡くなりました。臨終の際には、モンテーニュに「死はそれほどに悪いものではないさ」と語り、周囲の人々を慰めたと伝えられています。

自発的隷従論

ラ・ボエシの代表作である『自発的隷従論』は、「圧制は支配される側の自発的な隷従によって永続する」という思想を基に、支配・被支配構造の本質を鋭く見抜いた論文です。彼は、人々がなぜ自ら進んで権力者に服従するのかを問い、その心理的なメカニズムを明らかにしようとしました。

この論文は、当時の知識人の間で筆写され広まり、後のフランス革命にも影響を与えたと言われています。現代においても、権力構造や人間の自由について考える上で重要な示唆を与えてくれる作品です。

思想

ラ・ボエシの思想は、自由と平等、そして人間性の尊重を基盤としています。彼は、人間は本来自由な存在であり、自らの意思で隷従を選ぶべきではないと考えました。また、圧政を打破するためには、人々の意識改革が不可欠であると主張しました。

影響

ラ・ボエシの思想は、モンテーニュをはじめとする多くの知識人に影響を与えました。彼の著作は、フランス革命やその後の政治思想に大きな影響を与え、現代においても、自由と民主主義の理念を追求する人々にとって重要な示唆を与え続けています。

著作

自発的隷従論
正月勅令に対する意見書

関連文献

山上浩嗣 訳、西谷修 監修・解説『自発的隷従論』筑摩書房〈ちくま学芸文庫〉、2013年
斎藤美奈子「《今週の名言奇言 (週刊朝日)》　自発的隷従論　エティエンヌ・ド・ラ・ボエシ著／西谷修監修／山上浩嗣訳」『週刊朝日』2014年1月24日号、朝日新聞出版、2014年1月16日。

外部リンク

ラ・ボエシー - コトバンク
ラ・ボエシー - コトバンク

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