エドゥアール・コロンヌ

エドゥアール・コロンヌ（Édouard Judas Colonne, 1838年 7月23日 - 1910年 3月28日）は、19世紀後半から20世紀初頭にかけて活躍したフランスのヴァイオリン奏者、そして指揮者です。彼は自らが主宰したオーケストラであるコンセール・コロンヌ（現在のコンセール・コロンヌ管弦楽団）の活動を通じて、フランス音楽界に多大な貢献をしました。

音楽家の家系に生まれたコロンヌは、早くからその才能を開花させました。1855年にはパリ音楽院に進学し、著名な作曲家ジュール・マスネをはじめとする師事しました。音楽院では優秀な成績を収め、1858年に和声学で、そして1863年にはヴァイオリンで、それぞれ一等賞を獲得しています。

学費を捻出するため、コロンヌは音楽院在学中から活発な演奏活動を行いました。リリック劇場（後にサラ・ベルナール座、現在の市立劇場）のヴァイオリン奏者として舞台に立つ一方、1858年から1867年までの9年間はパリ・オペラ座管弦楽団のコンサートマスターという要職を務めました。さらに、同時期にはシャルル・ラムルーが率いるラムルー弦楽四重奏団にも参加し、第2ヴァイオリン奏者として室内楽にも取り組みました。その後、彼はジュール・パドルーが主宰するコンセール・ポピュレールに移籍し、ここで初めて指揮者として舞台に立ち、新たなキャリアの道が開かれました。

一時期、コロンヌは活動の場を海外に移し、1871年までニューヨークで音楽活動を行いました。フランス帰国後、1873年に転機が訪れます。音楽出版社主ジョルジュ・アルトマンの経済的な支援を受け、コロンヌは自らのオーケストラであるコンセール・ナシオナルを設立しました。オデオン座を拠点としたこの団体の旗揚げ公演では、セザール・フランクのオラトリオ『贖罪』の世界初演を実現し、ヴァンサン・ダンディが合唱指揮を担当しました。そのシーズンに開催された8回の演奏会では、ジュール・マスネのオラトリオ『マリー＝マドレーヌ』や、カミーユ・サン＝サーンスの『チェロ協奏曲第1番』といった重要な新作の初演が行われたほか、エクトル・ベルリオーズの劇的物語『ファウストの劫罰』が23年ぶりに再演されるなど、意欲的なプログラムが組まれました。これらの演奏会は音楽批評家や聴衆から高い評価を得たものの、経営は芳しくなく赤字が続いたため、アルトマンの支援が打ち切られてしまいます。

しかし、コロンヌは活動を諦めませんでした。1874年にはシャトレ座に新たな本拠地を定め、「コンセール・シャトレ芸術協会（Association Artistique des Concerts du Chatelet）」を設立し、演奏活動を継続しました。この協会は、同時期に活動していたジュール・パドルーのコンセール・ポピュレールや、後にシャルル・ラムルーが設立したコンセール・ラムルーといった、他の主要なオーケストラ団体と競い合いながら、パリの音楽シーンを盛り上げていきました。

コロンヌが率いる協会は、特にフランス近代音楽の紹介と普及に情熱を注ぎました。在任期間中に演奏した作曲家は300人を超え、彼らの作品を積極的にプログラムに取り入れました。中でも特筆すべきは、エクトル・ベルリオーズの作品への深い傾倒です。特に『ファウストの劫罰』は彼の代名詞ともいえるレパートリーとなり、その上演回数は実に172回を数えました。この作品の普及において、コロンヌの功績は計り知れません。また、彼はオーケストラを率いてポルトガル、スペイン、イギリス、ドイツ、ロシアなど、ヨーロッパ各地への海外公演も行い、フランス音楽の国際的な紹介にも貢献しました。

1892年には協会の名称を「コンセール・コロンヌ芸術協会（Association Artistique des Concerts Colonne）」と改称しました。同年から翌1893年にかけては、かつてコンサートマスターを務めたオペラ座管弦楽団の芸術監督も兼任し、リヒャルト・ワーグナーの『ローエングリン』や『ワルキューレ』といったドイツ・オペラの傑作を指揮するなど、その指揮活動の幅を広げました。

さらに、コロンヌは録音技術が黎明期にあった時代において、管弦楽作品のレコード録音にも積極的に協力しました。これは、彼の演奏や解釈を現代に伝える貴重な遺産となっています。

エドゥアール・コロンヌは1910年 3月28日にパリでその生涯を閉じました。彼の死後、コンセール・コロンヌの音楽監督の職は、作曲家で指揮者のガブリエル・ピエルネが引き継ぎ、その伝統は現代まで受け継がれています。

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