エドマンド・ラドロー

エドマンド・ラドロー：共和主義者とクロムウェルの影

エドマンド・ラドロー (1617年頃 - 1692年) は、イングランド内戦において重要な役割を果たした軍人にして政治家でした。ジェントリの子として生まれ、法学院に通っていたラドローは、1642年に勃発した第一次イングランド内戦に議会派として参加します。エセックス伯やウォラー、フェアファクスといった著名な指揮官の下で戦闘経験を積み重ねる一方で、政治への関心を深めていきました。

ラドローは、国王チャールズ1世と議会との対立を「王権神授説対民主主義」という構図で捉え、共和制国家の実現を目指す急進派として活動を開始します。1646年には長期議会の下院議員に選出され、精力的に政治活動を行います。中でも、ニューモデル軍の副司令官オリバー・クロムウェルとの激しい論争は有名です。彼はクロムウェルにイングランドの未来像を問いかけ、激しい議論を交わしました。

1648年には、議会穏健派とチャールズ1世の間で進められていた交渉に反対し、軍を動員してロンドンに進撃させるようフェアファクスに働きかけました。この行動は、後のチャールズ1世の処刑へと繋がります。1649年、チャールズ1世の裁判では判事を務め、「王殺し」の一人となりました。イングランド共和国の成立後も、国務会議委員に選ばれ、政治の中枢に深く関わりました。

しかし、ラドローとクロムウェルの間には、思想的な相違が常に存在していました。1649年の平等派の反乱鎮圧において、ラドローはクロムウェルの寛大な処置を批判し、両者の対立は深まりました。クロムウェルはラドローを危険視し、1650年には彼をアイルランドの騎兵部隊指揮官に任命することで、イングランドから遠ざけました。

アイルランドでは、アイアトン総督を補佐し、1651年には騎兵軍副司令官兼副総督に就任。アイアトンの死後には、フリートウッドと共にアイルランド平定に尽力しました。しかし、イングランドの政治への関与は継続し、クロムウェルの王党派への特赦令にも反対を唱え続けました。1653年のランプ議会解散後は政治から一時的に身を引きましたが、1659年にクロムウェルの死後、再び政界に復帰します。ランプ議会の議員、国務会議委員、そしてアイルランド総督に任命されるも、政権打倒を目指して活動しました。

しかし、王政復古の機運が高まると、ラドローはこれに反対し、身の危険を感じ、1660年にスイスに亡命します。1689年の名誉革命の際には一時帰国しますが、再び亡命生活に戻り、1692年にスイスで亡くなりました。

ラドローは亡命中に回想録を書き上げ、これは死後の1698年に出版されました。この回想録は、清教徒革命を理解する上で重要な史料となっています。しかし、この回想録においては、クロムウェルへの批判が非常に厳しく、彼を「偽善者」や「エデンの国の蛇」と断罪しています。一方、王党派や他の反対派からは、クロムウェルの政治家としての能力と人格について、より多角的な評価がなされています。ラドローの回想録を読む際には、こうした点を考慮する必要があるでしょう。彼の生涯は、イングランド内戦期の激動と、共和主義者の苦悩を如実に物語るものです。

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