エドワード・トーマス・ボス

エドワード・トーマス・ボス：オーストラリアのエジソン

エドワード・トーマス・ボス (1908年4月26日-1987年11月18日) は、オーストラリアを代表する発明家の一人です。医療機器、軍事技術、そして様々な分野にわたる革新的な発明で知られ、「オーストラリアのエジソン」と称されるほど、その功績は高く評価されています。

青年期と初期の成功

南オーストラリア州で生まれたボスは、幼少期から優秀な学生として頭角を現しました。アデレード大学物理学部に進学し、教授であるカー・グラントに見出され、個人秘書を務める傍ら、研究活動に没頭しました。

大学在学中に開発した心電計は、心臓の動きをリアルタイムで示す画期的なものでした。この発明はグラント教授に大きな感銘を与え、大学内に研究施設が設けられ、ボスは医療機器の設計と製造に専念できる環境を得ました。

医療機器開発への貢献

ボスは、南オーストラリアの医療業界における重要な存在となりました。彼の開発した心電計は、心臓病の診断に大きく貢献し、高い精度と信頼性で広く普及しました。

1930年代、ポリオが流行した際に、高価で入手困難な輸入の人工呼吸器（鉄の肺）の代替として、安価で軽量な人工呼吸器「ボス・レスピレーター」を開発しました。合板製のこの装置は、効果的な治療手段としてオーストラリア全土で広く普及し、2003年頃まで使用され続けました。

イギリスでの心電計販売中に、ポリオ患者への鉄の肺の必要性を認識したボスは、南オーストラリア州知事代理の支援を受け、自ら人工呼吸器を製作しました。そのうち一台はイギリスの映画で紹介され、モーリスモーターズのウィリアム・モリス卿の目に留まり、大量生産、無償提供へと繋がりました。第二次世界大戦前までに、約1800台のボス・ナフィールド式人工呼吸器がオーストラリアの病院に供給されました。

また、微細なウイルスを分離するための超遠心分離機をオーストラリアで初めて開発し、ポリオウイルスの研究に役立てられました。

戦時中の発明と軍事技術

第二次世界大戦中は、軍需産業に貢献するため、数々の発明を行いました。銃身の欠陥検査装置、誘導魚雷開発への参加に加え、携帯型心電計の開発など、医療機器の改良にも従事しました。

この時代には、電動三輪バンや「ビジテル」という画期的な装置も開発されました。電動三輪バンは変速機を持たないシンプルな設計で、ガソリン配給などに使用されました。「ビジテル」は、長距離にわたる図面送信を可能にする、ファックス機の先駆けとなる技術でした。軍事機密として扱われたこの装置は、アデレードとメルボルン間の通信などに使用されました。

さらに、戦争中の息抜きとして制作した、ヒトラーを風刺したコイン式遊戯機は、集まった収益を慈善団体に寄付されました。

戦後の活躍と多様な発明

戦後はシドニーに移り、新生児用インキュベーター、輸血機器、脳波計などの開発を続けました。特に、脳波計は神経疾患の診断に貢献し、医療現場で広く活用されるようになりました。

1952年のデビスカップや1956年のメルボルンオリンピックでは、電気スコアボードの設計・製作を担当。1万個もの電球を使用したオリンピックのスコアボードは、文字と数字を自在に表示できる画期的なものでした。

また、彼の弟であるドナルド・ボスは、新生児用インキュベーターを女王の戴冠式ギフト委員会に提案し、南オーストラリアからの贈り物として受け入れられました。

私生活

1937年にリリー・アイリーン・モード・ノートンと結婚しました。多忙な日々を送る一方で、水泳やテニスなどのスポーツも楽しみ、バランスの取れた生活を送っていたと伝えられています。1987年11月18日、79歳で生涯を閉じました。

まとめ

エドワード・トーマス・ボスは、オーストラリアの発明史に燦然と輝く偉大な発明家です。彼の発明は、医療技術、軍事技術、そして社会の様々な分野に多大な貢献を果たしました。その功績は、今日でも人々の生活に影響を与え続けています。彼の生涯と業績は、未来の発明家たちにとって、大きな刺激と希望を与え続けることでしょう。

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