エドワード・ドリンカー・コープ

エドワード・ドリンカー・コープ：化石戦争を生き抜いた古生物学者

エドワード・ドリンカー・コープ (1840年7月28日-1897年4月12日) は、19世紀後半に活躍したアメリカの古生物学者です。類まれな探究心と多大な貢献により、古生物学の歴史に名を刻む人物として知られています。彼は膨大な数の化石を発見・研究し、数々の新種を報告しました。その業績は、現代の古生物学に多大な影響を与えています。

幼少期からアカデミアへの道

コープは、ペンシルベニア州フィラデルフィアでクエーカー教徒の家庭に生まれました。幼い頃から自然への関心が強く、特に博物学に傾倒していました。その才能は早くから開花し、1859年にはまだ10代にも関わらず、フィラデルフィア自然科学アカデミーにイモリに関する論文を発表しています。その後、ペンシルベニア大学で学び、ヨーロッパへの遊学を経て研究を深めました。

キュレーター、教授としての活躍

1865年にはフィラデルフィア自然科学アカデミーのキュレーターに就任し、その後ハバフォード大学の教授、そしてペンシルベニア大学の教授と、アカデミアで重要な役割を担いました。彼の専門はアメリカの化石脊椎動物の研究であり、カンザス、ワイオミング、コロラドなど各地で精力的に発掘調査を行いました。

数々の発見と「化石戦争」

コープは、生涯で少なくとも1000種以上の新種の絶滅した脊椎動物を発見・報告しました。その中には、最古級の哺乳類や、有名な恐竜であるカマラサウルス、コエロフィシスなども含まれます。彼の研究は驚くべきペースで行われ、生涯に発表した論文数は1200を超えると言われています。

しかし、彼の研究人生は順風満帆ではありませんでした。オスニエル・チャールズ・マーシュとの間で繰り広げられた激しい化石発見競争、「化石戦争」は有名です。両者は発見競争に巨額の資金を投じ、時には不正行為までするほどでした。この競争は両者の財産を傾けさせましたが、同時に古生物学の発展に大きく貢献しました。

驚くべき遺言とその後

コープは1897年、消耗性疾患によりペンシルベニアで亡くなりました。彼の死因は不明な点が多く残されていますが、彼の遺体は彼の遺言に従い、献体されました。そして、1994年、古生物学者ロバート・バッカーが、コープの骨格標本をヒト（ホモ・サピエンス）の模式標本としようとする試みを行いました。これはコープ自身がヒトの模式標本が存在しないことを認識しており、自身の骨格をその目的に使用することを遺言したためです。しかし、この試みは実現しませんでした。

コープの遺産

コープの研究は、古生物学の進歩に多大な貢献をしました。彼は膨大な数の化石を発見し、その分析を通じて、絶滅した生物の進化や生態を解明しました。彼の功績は、現代の古生物学研究の基礎となっています。また、彼の残した膨大なコレクションは、現在も世界中の研究者にとって貴重な資料となっています。彼の生涯は、情熱と競争に満ちた、型破りな科学者の物語として、今も語り継がれています。彼の業績は、単なる化石発見にとどまらず、古生物学という学問分野そのものの発展に貢献したと言えるでしょう。彼の研究は、進化論や生物地理学、そして地球科学全般に大きな影響を与え続け、現代の古生物学者たちの研究活動に今も深く関わっています。コープの残した膨大な資料や論文は、今後とも古生物学研究の重要な基盤となり続けるでしょう。

もう一度検索