エノケンのとび助冒険旅行

『エノケンのとび助冒険旅行』

概要

『エノケンのとび助冒険旅行』は1949年9月20日に公開された日本映画で、榎本健一が主演を務め、中川信夫が監督を担当しました。この作品は、エノケンプロダクションと新東宝との共同制作で、白黒のスタンダードサイズで構成されています。内訳は8巻、合計2,215メートル、上映時間は約81分です。

中川信夫によるもので、彼の戦後復帰三作目にあたります。この映画は、彼の復帰作『馬車物語』同様に、榎本健一と徳川夢声が出演しています。物語は、榎本扮する人形遣いのとび助が幼い少女お福と出会い、彼女の母を探しながらユートピアを目指す冒険を描いています。中川信夫のインタビューによると、この作品はジョン・バニヤンの『天路歴程』にインスパイアされたものだとも見なされています。

特徴

この映画はファンタジーの要素を強調しているため、非現実的な世界の表現が重要視されています。特に、清水崑による漫画タッチの美術が使用されており、それが背景美術として効果的に活用されています。また、全編がスタジオで撮影され、ロケーション撮影は行われていません。製作は野口久光が担当し、実際のプロデュースは森岩雄が手がけています。中川は森がこの作品に強く関与していたと語っています。

脚本は山本嘉次郎が手掛けており、当時ベテランの監督が他の作品のために脚本を執筆するのは珍しいことでした。中川は山本の脚本に対してプレッシャーを感じたと回想しています。映画は子供向けの作品として作られ、冒頭では徳川夢声がナレーションを務め、コメディとホラーが混ざった冒険物語の特徴を紹介しています。

あらすじ

映画は、徳川夢声のナレーションから始まり、「怖くて、ためになって、面白いお話」として内容を暗示します。物語は中世末の京都を舞台に、人形遣いの大道芸人とび助が、母とはぐれた幼女お福を助けるところから進展します。彼らは「日本一のお山」にある里へ向かう旅に出ます。

道中、意地悪兵衛という関所の番人に阻まれますが、お福の無邪気さに触れた兵衛は心を改め、二人は道を進むことができます。次に彼らは熊が出る山道に入り、そこでの出来事や化け物との遭遇を通じて、さまざまな試練を経験します。特に、洞窟での毒グモの精との遭遇や、人食い鬼に追われる場面は緊張感を持っています。お福の知恵で、彼らは危機を乗り越えていきます。

最後には、二人は再び離れ離れになりながらも、奇跡的に再会を果たし、「死の谷」と呼ばれる恐ろしい場所を抜けて、ついに日本一のお山（富士山）の麓にたどり着きます。お福は母親と再会し、とび助は黄金色の果実を食べて回復を遂げ、平和な日々を過ごすことで物語は締めくくられます。

スタッフ

• - 監督: 中川信夫
• - 製作: 野口久光
• - 脚本: 山本嘉次郎
• - 撮影: 河崎喜久三
• - 美術: 進藤誠吾
• - 音楽: 早坂文雄
• - 解説（ナレーター）: 徳川夢声

この映画は、榎本健一の魅力が詰まったファンタジー冒険物語として、多くの人々に愛されています。

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