エピダウロス (ダルマチア)

エピダウロスは、アドリア海沿岸、現在のクロアチアに位置するダルマチア地方に存在した古代ギリシアの植民都市です。その起源は紀元前6世紀頃に遡るとされ、古代世界において重要な役割を果たしました。

都市は後にローマ帝国の支配下に入り、紀元前228年にエピダウリュウムと名称を改められました。ローマ内戦時には、ユリウス・カエサルとポンペイウスの争いの中で、小オクタウィウスの軍勢による包囲を受けましたが、執政官プブリウス・ヴァティニウスの到着によって守り抜かれました。この出来事は、エピダウロスが当時から戦略的に重要な拠点であったことを示唆しています。

しかし、7世紀になると、アヴァール人やスラヴ人による侵攻を受け、都市は破壊という悲劇に見舞われました。エピダウロスの住民たちは、この災厄から逃れるため、近隣のラウス（後のラグーサ、現在のドゥブロヴニク）へと避難しました。この避難民の存在が、その後のドゥブロヴニクの発展に寄与したと考えられています。

中世に入ると、エピダウロスの地に、ツァヴタットまたはラグーサ・ヴェッキーアと呼ばれる新たな町が建設されました。これは、古代都市エピダウロスの記憶を継承し、その歴史を新たな形で紡ぎ始めたことを意味します。

遺跡からは、アウグストゥス帝の時代の執政官P・コーネリウス・ドラベッラの墓や、イリュリクム（Illyricum）の行政官に関するローマの碑文が発見されています。これらの発見は、エピダウロスがローマ帝国においても重要な場所であったことを物語っています。また、水路の跡も残されており、当時の都市のインフラストラクチャーを知る手がかりとなっています。

古代イリュリア人たちは、この地をザプタル（Zaptal）と呼んでいました。エピダウロスの名は、ギリシャの世界遺産であるエピダウロスや、ラコニア県のエピダヴロス・リミラ州など、現代の地名にもその名残をとどめています。これらの地名は、古代都市エピダウロスの記憶を後世に伝えるとともに、その歴史的意義を象徴しています。

エピダウロスの歴史は、古代ギリシアの植民都市としての誕生から、ローマ帝国の支配、アヴァール人やスラヴ人による破壊、そして中世の再建という、多様な変遷を経てきました。遺跡から発見された遺物や碑文は、その歴史の断片を今に伝え、古代都市の姿を鮮やかに蘇らせます。

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