エフゲニー・ゴルベフ

生涯とキャリア

エフゲニー・キリロヴィチ・ゴルベフ（ロシア語: Евге́ний Кири́لлович Го́лубев, 1910年2月16日生 - 1988年 12月25日没）は、20世紀のソビエト連邦を代表する作曲家の一人です。彼の生涯は、ソビエト時代における音楽文化の発展期とほぼ重なります。

ゴルベフはロシアの首都モスクワで生まれ、その生涯の大部分をこの都市で過ごしました。音楽教育においては、高名な作曲家であり教育者でもあったニコライ・ミャスコフスキーに師事しました。ミャスコフスキーは、スクリャービンやプロコフィエフとも交流があった人物であり、その薫陶を受けたことは、ゴルベフの作曲家としての基盤形成に大きな影響を与えたと考えられます。ゴルベフは師から確固たる構成力と伝統的な音楽形式への理解を深く学んだと推測されます。

作曲活動のみならず、ゴルベフは後進の指導にも熱心に取り組みました。彼が教えた多くの弟子の中には、後に現代音楽の巨匠として世界的に知られるようになるアルフレート・シュニトケがいます。ゴルベフがシュニトケを指導したのは1953年から1958年にかけての時期であり、これはシュニトケがモスクワ音楽院で学んでいた頃にあたります。ゴルベフの指導は、シュニトケの初期の音楽形成に影響を与えた可能性が指摘されています。

ゴルベフは生涯にわたり、非常に精力的に作曲活動を行い、膨大な数の作品を残しました。彼の作品は、幅広い編成とジャンルにわたっており、その多作ぶりは特筆されます。

主要作品

ゴルベフの作品リストは非常に膨大で、多様なジャンルを網羅しています。

管弦楽曲

管弦楽作品としては、7曲の交響曲が知られています。これらの交響曲は、ソビエト時代の管弦楽の伝統を受け継ぎつつ、ゴルベフ独自の音楽語法で書かれています（具体的な様式に関する情報は少なくなっています）。また、独奏楽器と管弦楽のための協奏曲も数多く作曲しており、3曲のピアノ協奏曲、ヴァイオリン協奏曲、チェロ協奏曲、そして珍しい編成であるヴィオラ協奏曲があります。ピアノ協奏曲のうち、第3番は、著名なピアニストであるタチアナ・ニコラーエワに献呈されました。

室内楽曲

ゴルベフの創作活動の中でも、室内楽曲は特に重要な位置を占めています。その多作ぶりは驚異的であり、特に弦楽四重奏曲は少なくとも24曲という膨大な数を数えます。これは20世紀の作曲家としては異例なほどの多さです。これらの四重奏曲は、ゴルベフの室内楽における探求の深さを示しています。

また、より規模の大きな室内楽曲も手掛けており、ピアノ五重奏曲やハープ五重奏曲（ハープ、フルート、ヴァイオリン2、チェロ）があります。特にハープ五重奏曲は、その美しい響きと構成により、今日でも比較的演奏される機会が多い作品として知られています。

ソナタ

様々な楽器のためのソナタも数多く作曲されました。10曲のピアノソナタは、ゴルベフのピアノ音楽における重要なレパートリーを形成しています。これらのソナタは、技術的な要求と表現の深さを兼ね備えているとされます。ピアノソナタのうち、第6番は、彼の師であるニコライ・ミャスコフスキーに献呈されており、師への敬意が込められた作品と考えられます。その他にも、ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、そして比較的珍しいトランペットソナタといった、多岐にわたる楽器のためのソナタが存在します。

評価と受容

ゴルベフの作品は、ソビエト連邦時代においては一定の評価を得ていたと考えられます。特に教育者としての功績も大きく、多くの才能ある音楽家を育てました。作曲家としては、師ミャスコフスキーから受け継いだ構築的な手法と、旋律的な美しさを兼ね備えた作風が特徴とされます（情報がないため推測）。現代における彼の作品の演奏機会は限られているものの、前述のハープ五重奏曲のように、今日でも再評価され、演奏される作品も存在します。その膨大な作品群は、20世紀ソビエト音楽史における彼の貢献の大きさを物語っています。

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