エボニー協奏曲

エボニー協奏曲（Ebony Concerto）

イーゴリ・ストラヴィンスキーが作曲した「エボニー協奏曲」は、クラリネットとジャズバンドのために書かれた協奏曲であり、新古典主義の時代に位置づけられます。この作品は、ストラヴィンスキーが長年関心を寄せていたジャズの要素を本格的に取り入れたものとして知られています。

概要

ストラヴィンスキーは1918年頃からジャズに興味を持ち始め、「兵士の物語」などの作品でその影響が見られました。アメリカへの移住後、その興味はさらに深まり、ジャズバンドリーダーであるウディ・ハーマンからの依頼を受け、1945年に「エボニー協奏曲」を作曲しました。初演は1946年3月25日に、カーネギー・ホールにてウディ・ハーマン楽団によって行われました。

曲名の「エボニー」は、クラリネットの材料である黒檀（こくたん）に由来しています。ストラヴィンスキー自身は、この作品の性格を「ブルース風の緩徐楽章を持つ、ジャズ・コンチェルト・グロッソである」と述べています。これは、伝統的なコンチェルト・グロッソの形式をジャズの語法で再解釈しようとした試みと言えるでしょう。

楽器編成

この協奏曲は、以下の楽器のために書かれています。

独奏クラリネット
テナーサクソフォーン2
アルトサクソフォーン2
バリトンサクソフォーン
バスクラリネット2
ファゴット2
ホルン
トランペット5
トロンボーン3
ピアノ
ハープ
ギター
コントラバス
タムタム
シンバル
大太鼓

独奏クラリネットが常に主導的な役割を果たすわけではなく、バンド内の楽器同士の複雑な絡み合いに重点が置かれているのが特徴です。この点も、従来の協奏曲とは異なる、この作品ならではの魅力と言えるでしょう。

楽曲構成

全3楽章から構成されており、演奏時間は約11分です。

第1楽章：アレグロ・モデラート
2/2拍子。5本のトランペットが、ラグタイムのリズムに乗った旋律を提示して始まります。この冒頭から、ジャズの影響が色濃く感じられます。
第2楽章：アンダンテ
4/4拍子。ブルース風の緩徐楽章です。トロンボーン、ピアノ、コントラバス、バスドラムが伴奏を奏でる中、テナーサクソフォーンとバリトンサクソフォーンが異国情緒あふれる主題を奏でます。憂鬱で物憂い雰囲気が漂う、印象的な楽章です。
第3楽章：モデラート
2/2拍子。冒頭では、バスクラリネットとコントラバスによって中国風の旋律が現れます。その後、クラリネットのせわしないルンバのリズムに乗って、テナーサクソフォーンが第1楽章の旋律から派生した主題を提示します。全体として、リズミカルで賑やかな印象を与える楽章です。

まとめ

「エボニー協奏曲」は、ストラヴィンスキーがジャズという新たな要素を取り入れ、独自の音楽語法を確立した作品です。従来のクラシック音楽の形式にとらわれず、ジャズの即興性やリズム感を融合させることで、革新的な音楽表現を追求しました。その斬新な試みは、今日においても高く評価されています。

エボニー協奏曲の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト)

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