エミュレータ (コンピュータ)

エミュレータとは



エミュレータとは、あるコンピュータや機械装置の動作や機能を別の環境で模倣する技術、またはそのためのソフトウェアやハードウェアのことです。この模倣行為を「エミュレート」または「エミュレーション」と呼びます。

エミュレータの概要



エミュレータは、特定のコンピュータや機械の全機能を再現する機構です。特に、実機が存在するものや、実機の内部ロジックを再現するものを指すことが多く、仮想化技術の一種としても捉えられます。Java仮想マシンなどの仮想機械は、原理的にはエミュレータと似ていますが、模倣対象の実機がないため、一般的にはエミュレータとは区別されます。

エミュレータの需要が高まっている背景には、入手困難になった古いハードウェアの代用、まだ存在しない製品の代用、異なる環境でのソフトウェア実行、クロス開発の実行環境としての利用などがあります。これらの目的を達成するために、エミュレータは異なるハードウェアやオペレーティングシステム環境でもソフトウェアが動作できるようにします。

コンピュータ上で動作するエミュレータは、ソフトウェアで実装されることが多いですが、ハードウェアでエミュレートするものも産業用として広く利用されています。例えば、ICE（インサーキットエミュレータ）やROMエミュレータなどはハードウェアによって実装されたエミュレータの一例です。

コンピュータのエミュレータ



エミュレータは、対象となるハードウェアの仕様を模倣して動作します。ソフトウェアやハードウェアに対して適切なインターフェースを提供し、エミュレーションを念頭に製造された仕様や、製品として存在しない仕様を実現します。

エミュレータの主な用途としては、以下のようなものがあります。


最初の商用コンピュータのエミュレータは、1958年にIBM 709に搭載されました。また、マイクロプログラム方式のCPUは、複数の命令セットを容易にサポートできるようにしました。

一般的に、エミュレータはタイミングの制約を考慮しないことが多いです。例えば、Z80エミュレータは、実物のZ80と同じ速度で動作するとは限りません。ただし、リアルタイム処理を正確に再現する場合は、タイミングも考慮されます。

ほとんどのエミュレータは、環境の違いを吸収するために何らかの変換処理を行います。そのため、実行時のオーバーヘッドは避けられず、エミュレーション対象よりも高速な処理能力が必要です。しかし、古いハードウェアを高速なハードウェアでエミュレーションした場合、実機よりも高速に動作することもあります。

メインフレームや汎用機では、PCやUnixサーバ向けのCPUを使ったエミュレータで構成されたモデルも存在します。これは、PCやUnixサーバ向けCPUの性能が向上した結果、ソフトウェアでエミュレーションする方が速くなったためです。現代のPC向けCPUも、RISCプロセッサでCISCプロセッサをエミュレーションしている場合が多いです。

ゲームエミュレータ



ゲームエミュレータは、家庭用ゲーム機や業務用ゲーム機の動作を模倣するソフトウェアです。多くはゲーム機メーカーとは関係のない個人や団体によって作成されています。

さまざまなゲーム機のエミュレータが存在し、実行環境はパソコンが多いですが、家庭用ゲーム機に実装されたものもあります。市販ソフトウェアを対象とする場合、著作権の問題が複雑に絡み合います。

原則として、ゲームエミュレータ本体は、実物の動作をリバースエンジニアリングして開発する限りは違法ではありません。しかし、ハードウェアベンダから提供された情報を流用した場合は、守秘義務契約違反として違法性を問われることがあります。

パソコン上で実行する場合、ゲーム機の動作を汎用ハードウェアで再現するには多くの問題があり、実機と同等の速度で動作させるためには、元のゲーム機よりも高い処理能力が必要です。特に、複数のCPUを搭載したゲーム機や特殊な仕様のゲーム機のエミュレータ開発は困難です。また、エミュレータの再現度によって挙動が異なる場合や、音声など実機のアナログ回路に依存する問題もあります。

家庭用ゲーム機など、パソコン以外のハードウェア用エミュレータも存在します。例えば、ドリームキャスト上でPlayStationのソフトを動作させるものや、PSPでファミコンを動作させるものなどがあります。

一方、メーカー公認のエミュレータや、ROMイメージを販売・提供する例もあります。任天堂のWiiのバーチャルコンソールや、PlayStation 3のゲームアーカイブスなどがこれに当たります。

ROMイメージ



ゲームエミュレータは、ゲーム機本体を模倣するソフトウェアであるため、別途ゲームソフトが必要です。ゲームソフトはデジタルデータで、俗にROMイメージと呼ばれます。エミュレータは、ROMイメージの内容を読み込んで初めて動作します。

CD-ROMやDVD-ROMなどの汎用メディアを採用したソフトウェアは、直接ロードできる場合もありますが、それ以外の場合は、実物のゲームソフトからコピーしてROMイメージを作成する必要があります。

業務用ゲーム機の場合、基板からROMを取り出し、専用の機器で読み出します。家庭用ゲーム機も同様の手法でデータを取り出すことがあります。

パソコンで利用できないメディアのROMイメージを作成するには、ソフトとROMイメージを読み込める機器が必要です。これらの機器は、インターネット通販やアンダーグラウンドな店舗で販売されています。

ROMイメージの吸い出し行為は、以前は合法でしたが、2012年の著作権法改正により、コピープロテクト解除が違法になりました。ただし、コピープロテクトのないソフトの複製は依然として合法です。

コピーされたゲームデータのイメージは、インターネット上で違法に配布される事例が多く、著作権者や管理団体の問題となっています。

BIOS



ゲームエミュレータの種類によっては、ハードウェア環境固有の基本プログラムであるBIOSが必要な場合があります。BIOSはROMとして実装されており、ROMイメージと同様にゲーム機から抽出してコピーする必要があります。公衆への頒布は著作権法違反ですが、ROMイメージと同様に、違法に頒布される例は後を絶ちません。

BIOSをコピーするには、専用の機器とソフトウェアが必要で、ROMイメージコピー用の機器と同じく、アンダーグラウンドな店舗やインターネット通販で販売されています。しかし、X68000のように、メーカーが公式にBIOSの配布を許諾している場合もあります。

ゲームエミュレータの問題点と逮捕者



ゲームエミュレータにおける一番の問題は、ROMやBIOSイメージの入手方法です。現存するROMやBIOSデータの多くが、インターネット上で違法にアップロードや頒布されたものであり、著作権者や関連団体が問題視しています。

ゲームエミュレータは、古いゲームをプレイする目的だけでなく、最新ゲーム機のエミュレータも存在します。コピーされたソフトは実機を必要としないため、発売前にゲームソフトが流出する事態も発生しています。

日本では、データを提供する側を罰する法律がありますが、受け取る側は著作権法が親告罪であるため、グレーゾーンと解釈されることもあります。しかし、悪質な場合は警察が捜査を行うこともあり、違法ダウンロードは刑事罰化されています。

自分のソフトをダウンロードすることは合法という記述もありますが、アップロードされたデータは他人が複製したものであるため、私的複製には該当しません。

家庭内での私的複製は著作権法で認められていますが、コピープロテクトを破って複製する場合は違法です。また、契約でコピーが禁止されていれば、ソフトのコピーは契約違反になります。更に、配布サイトを教唆する行為も違法と解釈される可能性があります。

これらの情報を認識しつつ使用した場合、著作権侵害となり、刑事罰が科せられる可能性があります。

ゲームサーバエミュレータ



オンラインゲームのサーバをエミュレートするソフトウェアも存在します。これらはエミュレータと呼ばれていますが、実際にはサーバサービスとプロトコルのシミュレータです。また、そのようなソフトウェアで公開されているサーバを「エミュレータサーバ」などと呼びます。

エミュレータの中には、正規のサーバソフトウェアを不正に入手して使用している場合もあります。エミュレータサーバは、グラフィックなどのデータはクライアントソフトに依存しているため、外観はほぼ同一ですが、エミュレーションの再現度によって、ゲーム内容に違いが生じることがあります。

エミュレータサーバは、多くが個人によって運営されており、無料で接続できるのが特徴です。無料で開放されている理由としては、著作権や商標に抵触する可能性があり、有料化すると営業妨害で訴えられるリスクがあるためです。

エミュレータサーバに接続するユーザーが逮捕されることは少ないですが、クライアントソフトの改造を必要とする場合があり、それはクライアントソフトウェアの利用規約に違反することがあります。

各種エミュレータ



（多数のエミュレータのリストを記載）

脚注



（脚注のリストを記載）

関連項目




外部リンク



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