エミール・ベルナール (画家)

エミール・ベルナール：ポスト印象派の軌跡

1868年、フランスのリールで繊維業者の家に生まれたエミール・ベルナールは、10歳の時にパリに移住。1884年、フェルナン・コルモンの画塾に入学し、そこでルイ・アンクタンやアンリ・ド・トゥールーズ＝ロートレックら同時代の若き才能に出会います。コルモンのアトリエを離れた後、ベルナールはノルマンディーやブルターニュを放浪。この旅の過程で、彼はコンカルノーでエミール・シェフネッケルと出会い、ゴーギャンを紹介する手紙を託されます。ポン＝タヴァンを訪れたものの、ゴーギャンとの出会いはこの時は実現しませんでした。

パリに戻ったベルナールは、1886年から1887年にかけての冬に、フィンセント・ファン・ゴッホと出会います。この頃、ベルナールは点描を用いた絵画制作に取り組んでいました。その後、再びノルマンディーとブルターニュへ旅をし、サン＝ブリアック＝シュル＝メールに滞在。ポン＝タヴァンへ再度訪れた際には、ゴーギャンとシャルル・ラヴァルはマルティニークへ旅立っており、彼らと合流することは叶いませんでした。この滞在期間中に、ベルナールは点描技法を放棄し、ルイ・アンクタンと共にクロワゾニスムと呼ばれる画法を確立していくことになります。

1888年8月、ポン＝タヴァンに戻ってきたゴーギャンとベルナールはついに本格的な交流を始め、共同で「総合主義」（サンテティスム）という新たな芸術運動を確立。この年、ベルナールは総合主義の代表作である「草地のブルターニュの女たち」を制作しました。翌年には、ポン＝タヴァンの画家たちがパリのカフェ・ヴォルピニでグループ展を開催。ベルナールも参加し、その作品を発表しました。

しかし、1891年にはベルナールとゴーギャンとの間に確執が生じ、二人の友情は終わりを告げます。1893年以降は、パトロンであるラ＝ロシュフコーの支援を受けながら、イタリア、エジプト、スペインなどを巡る旅を続けました。1904年にフランスへ帰国したベルナールは、エクス＝アン＝プロヴァンスでポール・セザンヌと出会います。

晩年、ベルナールはミケランジェロなどの影響を受け、よりアカデミックな画風へと回帰していきました。1941年、72歳でパリにて生涯を終えます。彼の作品は、ポスト印象派における重要な一端を担い、クロワゾニスムや総合主義といった革新的な技法と芸術運動の発展に大きく貢献しました。ベルナールは、ゴッホ、ゴーギャン、セザンヌといった巨匠たちと交流し、彼らとの関係性を通して自身の芸術観を深めていった、20世紀美術史における重要な人物と言えるでしょう。彼の生涯と作品は、ポスト印象派の多様性と複雑性を理解する上で欠かせない要素です。

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