ポール・セザンヌ

ポール・セザンヌ：近代絵画の父

1. 生涯

1839年、南フランスのエクス＝アン＝[[プロヴァンス]]に裕福な銀行家の息子として生まれたセザンヌは、10代でエミール・ゾラと親交を結びます。当初は法学部に通っていましたが、ゾラの勧めもあり1861年にパリへ移り、絵画の道へ進みます。パリでは印象派の画家たちと交流を持ちましたが、サロンへの応募はことごとく落選。ロマン主義的な暗い色調の作品を多く制作する時期を過ごしました。1869年にはオルタンス・フィケと出会い、後に結婚します。

1870年代には印象派の技法を取り入れ、明るい色彩の作品を制作。第1回と第3回印象派展に出展しますが、厳しい批評にさらされます。1879年頃からは故郷のエクスに戻り、印象派から離れて独自の様式を追求するようになりました。色彩とボリュームによる独自の秩序を備えた絵画を追求し、徐々に若い画家や批評家たちの間で評価を高めていきます。1886年には親友であったゾラとの関係が悪化します。1895年にヴォラール画廊で初の個展を開催し、パリで広く知られるようになりました。晩年までエクスで制作を続け、多くの若い画家たちが彼のもとを訪れます。1906年、肺炎のため死去しました。没後、その名声はさらに高まり、1907年のサロン・ドートンヌでの回顧展は後の世代に多大な影響を与えます。ピカソやブラックらもその展覧会を訪れています。

2. 画家としての出発と印象派の時代

パリでの初期の頃は、アカデミー・シュイスに通い、ピサロ、モネ、ルノワールらと交流。しかしながら、アカデミー・シュイスでは周囲の嘲笑の的になることもありました。ロマン主義的な暗い色調の作品が多い一方、ピサロとの共同制作を通して印象派の明るい技法を習得していきます。印象派展に出展するものの、酷評されることも少なくありませんでしたが、一方で、ゾラなどから評価を得る場面もありました。サロン落選を繰り返しながらも、独自の探求を続けます。

3. エクスでの隠遁生活と晩年

1879年頃からはエクスを拠点に制作。印象派の手法に限界を感じ、独自の表現方法を追求します。サロンにも応募を続け、1882年には入選を果たしました。この時期は、パリの画壇からは顧みられない時期が続きますが、画材店「タンギー爺さん」を通じて、ゴーギャンやゴッホといった後進の画家たちがセザンヌの作品に強い関心を寄せていたことが知られています。1886年にはゾラとの関係が悪化しますが、その後、手紙のやり取りが再開されたという新たな発見もあります。1895年の個展の成功を機に、彼の作品は広く認知されるようになり、多くの若手画家が彼の元に教えを請いに訪れるようになります。晩年には、サント・ヴィクトワール山をモチーフにした連作に取り組み、独特の表現方法で自然を捉えています。

4. 個展の開催と最晩年

1895年、画商ヴォラールがセザンヌの個展を開催。批評家の評価は必ずしも高くなかったものの、ピサロなどからは高く評価されました。個展はセザンヌの画業を広く知らしめるきっかけとなり、晩年は、エミール・ベルナールなど若手画家との交流を深め、芸術論を語り合います。ベルナールが記した「自然を円筒、球、円錐によって扱う」という言葉は、後のキュビスムに大きな影響を与えます。1906年、制作中に肺炎を患い死去。

5. 作品と作風

セザンヌの作品は、油絵、水彩画、デッサンなど多岐に渡り、900点以上の油絵が残されています。初期の作品はロマン主義的な影響が強い一方、印象派との出会いを経て、独自の様式を確立。彼は、印象派の光と色の表現方法を踏襲しつつも、対象物の構造や幾何学的形態を重視しました。静物画、風景画、人物画など様々なジャンルの作品を制作し、特にサント・ヴィクトワール山を描いた連作は有名です。人物画においては、モデルの瞬間的な表情ではなく、空間における人体を立体的に捉えることに重きを置いていました。色彩のモデュラシオン（転調）や、物の形を面として捉える手法は、キュビスムの先駆けとして高く評価されています。セザンヌは、単に自然を模写するのではなく、自身の知的な秩序に基づいて自然を表現しようとしていました。

6. 後世への影響と作品の高騰

セザンヌの作品は、没後、その価値が急激に高まりました。特に20世紀初頭以降、キュビスムなど20世紀美術に大きな影響を与え、「近代絵画の父」と呼ばれるようになります。彼の作品は、現在では、美術市場において非常に高値で取引されています。1980年代以降、特に日本人が高額で作品を購入したことで、セザンヌの絵画の価格は飛躍的に上昇しています。

7. 参考文献

本文中で言及した書籍以外にも、セザンヌに関する多くの文献が存在します。より深い理解のためには、これらの文献を参照することをお勧めします。

もう一度検索