エメリー・ワールドワイド17便墜落事故

エメリー・ワールドワイド17便墜落事故の概要

2000年2月16日、アメリカの貨物航空会社エメリー・ワールドワイドが運航する17便、ダグラスDC-8-71F型機（機体記号N8079U）が、カリフォルニア州サクラメントのマザー空港を離陸直後に墜落しました。この事故により、乗員3名全員が死亡するという痛ましい結果となりました。

17便は、ネバダ州リノ・タホ国際空港からサクラメントを経由し、オハイオ州デイトン国際空港へ向かう国内定期貨物便でした。事故当時、機体は離陸滑走を開始し、離陸決心速度（V1）に達した後、機首上げ操作が行われましたが、機首は操縦桿の操作に反して上昇を続けました。

機体が離陸した直後、異常に気づいた副操縦士はサクラメントへの帰還を要請しましたが、機体は不安定な動きを始め、降下を開始。その後、機体は一度上昇を試みたものの、制御不能に陥り、空港近くの中古車回収場に墜落、炎上しました。

事故原因の究明

国家運輸安全委員会（NTSB）の調査により、事故原因は右側昇降舵の制御喪失であることが判明しました。詳細な調査の結果、昇降舵を制御するプッシュロッドとクランクを接続するボルトが脱落しており、その結果、昇降舵が異常な機首上げ状態になったことが分かりました。

通常、このボルトはピンで固定されていますが、事故機では右側のボルトにピンが取り付けられていませんでした。事故機は墜落前にD検査を含む大規模なメンテナンスを受けており、その際にピンの付け忘れがあったと推定されましたが、どの段階で発生したかは特定できませんでした。

NTSBは、この事故の最終報告書で、右側昇降舵の制御タブを固定するボルトの不適切な取り付けと点検が原因であると結論づけました。また、エメリー・ワールドワイドによるメンテナンス手順の不備が、ボルトに過大な負荷をかけていたことも明らかになりました。

事故後の影響と勧告

NTSBは、この事故を受けて15の勧告を発行しました。その中でも特に重要なのは、アメリカ国内の全てのDC-8型機を点検し、昇降舵のタブの脱落によって発生する可能性のある事故を防ぐことでした。連邦航空局はその後、エメリー・ワールドワイドに対して100件以上のメンテナンス違反を発見し、同社は2001年8月13日に運航を停止しました。

この事故は、航空機の安全において、適切なメンテナンスが不可欠であることを改めて示すものでした。また、一つの小さな部品の不備が、航空機の重大な事故につながる可能性を強く示唆する事例として、航空業界に大きな教訓を残しました。

類似事故

類似の事例として、1970年に発生したトランス・インターナショナル航空863便墜落事故が挙げられます。この事故も、メンテナンス不良が原因で昇降舵が動作不良を起こし、急激な機首上げが発生したことが原因でした。

映像化

この事故は、「メーデー!:航空機事故の真実と真相」というドキュメンタリー番組の第16シーズン第1話で「Nuts and Bolts」というタイトルで映像化されています。

関連項目

以下は、本件と同様に航空機のメンテナンス不良や機体の不具合が原因で発生した航空事故です。

コンチネンタル・エクスプレス2574便墜落事故
エア・ミッドウエスト5481便墜落事故
ナショナル・エアラインズ102便墜落事故
ファイン・エア101便墜落事故

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