エリシウム平原

「エリシウム平原」（英語: Elysium Planitia）は、火星の赤道近くに位置する広大な平坦地帯です。この平原は、中心座標がおよそ北緯3.0度、東経154.7度付近にあり、エリシウム地域からアイオリス地域にかけて広がりを見せています。

地形

平原の北側には、エリシウム山をはじめとする火山群が連なっており、これらはタルシス地域に次いで火星で二番目に大きな火山地帯を形成しています。エリシウム平原の表面には、いくつかの注目すべきクレーターが点在しており、その中にはエディー、ロッキャー、トンボーといった比較的大きなものもあります。また、エリシウム山やアルボル・トロスのような巨大な火山、そして火星上で最も新しい地形の一つとされるアサバスカ峡谷もこの平原内に位置しています。平原の東端には、オルクス・パテラと呼ばれる細長い窪地が特徴的な地形として存在します。

地下の氷

[エリシウム平原]]が科学的に特に注目される理由の一つに、地下に大量の水の氷が存在する可能性が挙げられます。2005年、欧州宇宙機関]の[[火星探査機「マーズ・エクスプレス」が、平原内の北緯5度、東経150度付近を撮影した高解像度画像から、灰色の層に覆われた氷の存在が示唆されました。この氷は、およそ800km×900kmという広範囲にわたり、推定で深さ45メートル程度に達すると考えられています。これは地球の北海に匹敵する規模と深さにあたります。この巨大な氷塊は、約200万年から1,000万年前にケルベルス地溝帯から噴出した大量の水が凍結して残ったものだと推測されています。エリシウム平原の地表に見られる、まるで凍結した湖の表面の割れた氷のような「プレート」状の構造は、この地下の氷と関連があると考えられています。これらのプレート構造は、クレーターの形成による溶岩の固化跡と比較分析した結果、100万年以上前に形成されたものであることが示唆されています。

探査

[エリシウム平原]]は、火星探査における重要な地点でもあります。平原の南端に位置するゲール・クレーターには、2012年にアメリカ航空宇宙局]の[[火星探査車「キュリオシティ」が着陸し、長期間にわたる地質調査や環境分析を行っています。さらに、2018年11月には、同じくNASAの無人着陸機「インサイト」がエリシウム平原内の別の地点に着陸しました。インサイトは高感度地震計などを搭載しており、火星内部の構造や活動、いわゆる「火震(かせいしん)」の観測などを通じて、火星の進化史の解明に貢献しています。

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