ラルト

ラルト (Ralt Engineering Ltd.) に関する詳細

ラルトはイギリスのレーシングカーコンストラクターで、その設立は1950年代に遡ります。オーストラリア出身のエンジニア、ロン・トーラナックと彼の弟オースティン・ルイスが共同でシャシーを製造し、地元のレースに挑戦したことが始まりです。彼らの名前の頭文字を取って、「RALT」という名が付けられました。トーラナックはその後、同じくオーストラリア出身の名ドライバー、ジャック・ブラバムに誘われてイギリスに移り住み、モーター・レーシング・ディベロップメント社（ブラバム）を共同設立します。

1970年、ブラバムが引退後、トーラナックがその運営を受け継ぎますが、1972年にはバーニー・エクレストンにチームを売却しました。彼はしばらくはフランク・ウィリアムズのF1プロジェクトに関与した後、1974年には自身のガレージを開設し、ラルトの名を再び使い始めます。この新しいスタートにより、ラルトは1975年に初のシャシー「RT1」を発表し、その後F2、F3、フォーミュラ・アトランティック用のシャシーを供給し始めました。

ラルトはヨーロッパ各国のF3選手権で多くのチャンピオンを輩出し、特にネルソン・ピケ選手が目立った存在でした。1980年にホンダがF2エンジンの供給を再開すると、ラルトはホンダの公式ワークスチームとなり、ホンダ・RA260Eエンジンの供給を受けることに成功します。1981年にはジェフ・リースがラルト・RH6でヨーロッパF2チャンピオンに輝くなど、ラルトは全盛期を迎えました。

しかし、トーラナックの開発したマシンはコンサバティブなデザインであったため、エンジン供給者であるホンダからはライバルのマーチと比較して評価が分かれることもありました。1982年にはホンダが他社にエンジン供給を始めたことで、ラルトの影響力は次第に低下。以後もF3やF3000向けのシャシーを開発し続けましたが、1985年に発表されたフラットボトム型F3シャシーは多くの成功を収める一方で、競争相手には劣り始めていきました。

1991年に初のカーボンモノコックシャシー「RT36」を発表するも、これが市場での競争に敗れ、「失敗作」とされました。業績が悪化する中、既に1989年からマーチの傘下に入っていたラルトは、1992年には事実上消滅し、1993年に売却されることとなります。ロン・トーラナック自身もその後、レーシングチームから退くことになりました。

その後、アメリカのフォーミュラ・アトランティックシリーズや鈴鹿サーキットレーシングスクール向けに特定のシャシーを製造していましたが、1998年には久々にF3用のシャシーを開発しました。しかし、ダラーラの優位が確立されたF3界においては競争力を失い、2003年に登場したF303を最後に新車の販売は行われませんでした。

ラルトは、モータースポーツ界における数々の成功と同時に、変化する競争環境の中での苦境も経験し、その歴史は多くの教訓を残しました。

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