1983年のル・マン24時間レース

1983年ル・マン24時間レース：ポルシェ956の圧勝とマツダ717Cの挑戦

1983年6月18日から19日にかけて、フランスのサルト・サーキットで開催されたル・マン24時間レースは、51回目の大会でした。この年は、クラス分けがグループBとグループCに整理され、新たに燃料タンク容量55リットル、最低重量700kgのグループCジュニアクラスが設けられました。大会公式ポスターには、前年優勝を果たしたポルシェ956が採用されました。

グループCの戦い：ポルシェの圧倒的優位

グループCでは、前年優勝車のポルシェ956がカスタマー仕様として販売され、ワークスチームを含む11台が出場しました。ワークスチームのポルシェ956は、エンジンマネージメントシステムを改良するなど性能向上を図り、カスタマー仕様車と比べても軽量化が図られていました。一方、ランチアはフェラーリ製のV型8気筒ターボエンジンを搭載したLC2で対抗しましたが、ポルシェの性能を凌駕するには至りませんでした。

予選では、ランチアがターボ過給圧を高めて800馬力を発揮、ポルシェを攪乱する作戦に出ましたが、ポルシェは高グリップタイヤなどを投入して対抗し、前年を13秒も上回る3分16秒56のポールポジションを獲得しました。

決勝レースは、51台がスタート。ポルシェ956は他のグループC車両を圧倒的な速さで周回遅れにし、4時間目にはトップ10を独占する状況となりました。ワークスチームの1号車は、プライベーターのポルシェと接触するアクシデントに見舞われ大きく順位を落としましたが、燃費を極限まで節約しながら驚異的な追い上げを見せました。

最終的には、ヴァーン・シュパン/ハーレイ・ヘイウッド/アル・ホルバート組のポルシェ956が優勝。ゴール直前にはドアが吹き飛び、エンジン過熱といったトラブルに見舞われながらも、5,047.934kmを平均速度210.330km/hで走りきりました。2位にはジャッキー・イクス/デレック・ベル組が続きました。ワークスのポルシェは、燃料ポンプやエンジントラブルでリタイアした車両もありましたが、トップ10のうちザウバーC7を除く全車をポルシェ956が独占するという結果となりました。プライベーター勢最高位はクレマー・レーシングの3位で、前年の優勝車よりも63km多い走行距離を記録しました。これは、ポルシェの技術進化と厳しい燃費規制の中での成果と言えるでしょう。

グループCジュニア：マツダ717Cの初挑戦

グループCジュニアクラスには、マツダがRX-7をベースにせず、新規開発したレース専用車マツダ717Cで参戦しました。これは、マツダがル・マン挑戦を正式に承認したことを示す大きな一歩でした。エースドライバーの片山義美を擁するマツダスピードチームは、予選では空気抵抗低減を優先したセッティングの影響でタイムは伸び悩みましたが、決勝ではトラブルなく走りきり、60号車がクラス優勝、61号車がクラス2位という結果を残しました。

まとめ

1983年ル・マン24時間レースは、ポルシェ956の圧倒的な強さ、マツダ717Cの健闘、そして各チームの技術革新が凝縮された大会となりました。厳しい燃費規制の中で、5000kmを超える走行距離を達成した車両もあったことから、この時代の自動車技術の高さが伺えます。また、レース中に発生したアクシデントやトラブル、そしてドライバーたちの執念が織りなすドラマチックな展開は、多くの観客を魅了したに違いありません。このレースは、モータースポーツ史に大きな足跡を残したと言えるでしょう。

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