エリナー・オブ・レスター

エリナー・オブ・レスター：激動の時代を生き抜いた王女

エリナー・オブ・レスター（Eleanor of Leicester, 1215年 - 1275年4月13日）は、イングランド王ジョンと王妃イザベラ・オブ・アングレームの間に生まれた末娘です。彼女は、激動の中世イングランドを生き抜き、二度の結婚と亡命という波乱に満ちた生涯を送りました。

生い立ちと最初の結婚

エリナーは、第一次バロン戦争の混乱の中、母が避難していたグロスターで生まれました。父ジョン王は、エリナーが1歳の時に亡くなり、その顔を見ることはありませんでした。幼いエリナーは、兄ヘンリー3世の摂政を務めた初代ペンブルック伯ウィリアム・マーシャルの息子、第2代ペンブルック伯ウィリアム・マーシャルと婚約します。1224年、わずか9歳で34歳のウィリアムと結婚しました。しかし、二人の間に子供はできず、夫は7年後に亡くなります。未亡人となったエリナーは、世俗の生活を捨てる決意をし、カンタベリー大司教エドマンド・リッチの立ち会いのもと、貞潔の誓いを立てました。

レスター伯シモン・ド・モンフォールとの再婚

数年後、エリナーは第6代レスター伯シモン・ド・モンフォールと出会い、恋に落ちます。マシュー・パリスの年代記によれば、シモンはエリナーの美貌と洗練された振る舞いに魅了されたと記されています。1238年、二人はウェストミンスター宮殿の王室礼拝堂で秘密結婚しました。兄ヘンリー3世は当初この結婚を渋々承諾しましたが、エリナーが貞潔の誓いを立てた後の再婚であったため、教会からは問題視されました。シモンはローマに巡礼し、特免を得て正式に結婚を認められました。

バロン戦争と亡命

シモンはヘンリー3世の寵臣として権勢を振るいますが、やがて王と対立し、第2次バロン戦争を引き起こします。1265年、シモンはイーヴシャムの戦いで国王軍に敗れて戦死しました。反逆者の妻となったエリナーはイングランドを離れ、フランスに亡命せざるを得なくなります。彼女は、シモンの妹が修道院長を務めるモンタルジの女子修道院に身を寄せ、そこで生涯を終えました。兄ヘンリー3世は、国を離れたエリナーを気遣い、彼女の収入を差し止めることはありませんでした。また、王はエリナーの代理人が、没収されたレスター伯領を取り戻すための訴訟を起こすことも認めています。

子女と後世への影響

エリナーは、シモン・ド・モンフォールとの間に7人の子供をもうけました。

アンリ・ド・モンフォール（1238年 - 1265年） - イーヴシャムの戦いで戦死
シモン・ド・モンフォール（1240年 - 1271年）
アモーリー・ド・モンフォール（1242/1243年 - 1301年） - ヨーク大聖堂参事会員
ギー・ド・モンフォール（1244年 - 1288年頃） - ノラ伯
ジャンヌ・ド・モンフォール（生没年不明、夭折）
リシャール・ド・モンフォール（1252年 - 1266年）
エリナー・ド・モンフォール（1258年 - 1282年） - ウェールズ公ルウェリン・アプ・グリフィズと結婚

エリナーの血筋は後世にもつながり、エドワード4世の王妃エリザベス・ウッドヴィルは、エリナーの8世孫にあたります。

エリナー・オブ・レスターは、その波乱に満ちた生涯を通じて、中世イングランドの歴史に深く刻まれた女性の一人です。彼女の人生は、王族としての義務と、自身の感情との間で葛藤しながらも、強く生き抜いた姿を現代に伝えています。

参考資料

Maddicott, J.R. Simon de Montfort, 1996
Margaret Wade Labarge, N. E. Griffiths: A Medieval Miscellany. McGill-Queen's Press 1997, ISBN 0-88629-290-5
John Fines: Who's Who in the Middle Ages. Barnes & Noble Publishing 1995, ISBN 1-56619-716-3

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